すると衣食住その他で、およそ5700億円という巨額の数字が弾き出された。高齢者の国内移住は、地方に十分な経済効果を生みだしうるのだ。

 さらに、地方中核都市には放っておけば老朽化するばかりの公営住宅がたくさんある。これを再生させ、高齢者向けの小ぢんまりとした快適な団地にして、介護ケア付きで高齢者を受け入れることは地方都市再生の有効な策になるだろう。

ドイツに学ぶ有効な減築政策

 ドイツでは1990年の東西統合の後、旧東ドイツから西ドイツへと、仕事を求めて多くの人が移り住んだ。その結果、以前から公営住宅が多かった東ドイツ地域では、急激に空き家が増え、スラム化が加速した。

 そこでドイツ政府は、住宅を減らしつつ住環境を向上させることにした。老朽化した建物を除去するとともに、団地の骨格を生かしながら、戸建てや小ぶりの集合住宅に建て替えていき、公共のスペースや緑地の比率を高めた。その際、空き家の解体費に補助金を出し、次の用途が決まっていなければ、10年間は緑地にする条件で固定資産税を免除するという、思い切った政策を打ち出している。

 団地を核に、都市の新陳代謝を高めるこうした政策は、日本でも十分生かせるはずだ。私は、日本人がドイツに学びつつ「都市の減築」に本腰を入れたら、本場ドイツを超えて見事に地方都市の再生を成し遂げうるという気がしている。

 地方の団地は敷地に余裕があるから、単に減築するだけでなく、ドイツのクラインガルテン(滞在型の市民農園)の手法を取り入れ、自然豊かな共生生活を実現することもできる。

 高齢者の安心を確保しつつ暮らしを充実させ、街を美しく再生させ、同時に地方に仕事と活力を生む。「三方よし」のプランになるはずだが、どうだろうか。ぜひ、国や自治体に検討してほしいと願っている。 

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