時代の要請と社会のニーズにマッチした人間力形成の場を実現するための大学の取り組みは、枚挙にいとまがない。そうした現状をどのように理解し、進学先選びに結び付ければいいか。大学通信の安田賢治・常務取締役に聞いた。

大学通信情報調査・編集部ゼネラル
安田賢治 常務取締役

1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大学通信に入社。大学に関するさまざまな情報を、書籍、情報誌を通じて発信するとともに、セミナー、講演なども多数行っている。私立学校のコンサルティングにも協力し、学校経営の内実に詳しい。近著に『笑うに笑えない大学の惨状』(祥伝社新書)。

「受験生の志望校の選び方が、明らかに変わってきました」と、大学通信の安田賢治・常務取締役は切り出した。確かに、全国の進学校に対するアンケートを見ると、生徒に人気のある大学として、2008年には、社会的評価やイメージ、知名度のある大学に人気が集まる傾向があった(表1)。ところが最新の調査では、資格や就職など卒業後の進路に関わる要因に注目が集まっているようだ(表2)。

 この理由について、安田常務は「ここしばらく、新卒学生の就職難が大きな話題となっていました。景気が低迷する中で、より確実に将来の職を得られるよう資格を取得できる大学、就職支援が充実して実績も高い大学への志向が強まったのでしょう」と分析する。一方で、「前年に比べ、社会的評価や知名度がやや重視されてきたようです。景気回復の傾向を反映しているのかもしれません」とも語る。さらに「国際化の観点が浮かび上がってきたことも、最近の特徴です」と、安田常務。留学の実績やサポート体制の有無などへの関心が高まっているのだという。高校までの授業に国際理解や国際交流が盛り込まれてきたこともあるだろうし、身近なグローバル化の動きに即応しているとみることもできそうだ。