数十年前に建てたマイホームの傷みが目立つようになり、「そろそろ本格的にリフォームしなければ……」と考えている人は多い。また、中古物件を購入して「リノベーションすれば、新築物件より安上がり……」ともくろんでいる人も少なくないはず。だが、意外と、新築以上に注意すべきポイントが多いのがリフォームやリノベーションだ。
歳月を経れば、あらゆるものは朽ちたり劣化したりする宿命にあり、住まいもしかりだ。ただ多くの場合、戸建てにしろマンションにしろ、“家”は人生で最も高額の出費であるだけに、劣化したからといって、そうたやすく建て替えや買い替えを決断できるものではない。予算面もさることながら、自分なりにこだわった家であれば愛着もあり、リフォームやリノベーションにとどめておきたいと考える人も少なくないだろう。
しかし、安直な発想で改修工事を進めてしまうと、思わぬ誤算が生じがち。そう注意を促すのは、住生活ジャーナリストの田中直輝氏だ。
改修工事後も
長く付き合える業者を選ぶこと
田中直輝 氏
1970年生まれ。福岡県出身。早稲田大学教育学部卒業。海外17ヵ国を一人旅した後、98年から約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当。2007年より住生活ジャーナリストとして、戸建てはもちろん、不動産業界までも含め、幅広く“住宅”について探求。
「まず、リフォーム、リノベーションのほうが新築よりも費用がかからないと思っているなら、それは大きな誤解。実際に壁を剥がしてみると想定以上に傷みが激しく、当初の見積もりよりも費用がかさむケースもあります。外見では判断がつかず、まさにケース・バイ・ケース。コストパフォーマンスから判断すれば、新築したほうが安くついたということもあります」
よくいわれるように、見積もりが甘い業者の場合は、どんどん費用が膨らみかねないし、ずさんな工事にも注意が必要だというわけだ。
こうした点も踏まえれば、心から信頼できる業者を選び抜き、とことん相談を重ねた上で工事を実施することが肝心だといえよう。田中氏いわく、「リフォームやリノベーションを行う場合も、新築する際と同等以上の細かな配慮が欠かせない」のだ。
「改修後30年間は耐震性などに不安が生じない、しっかりとした工事を行うことが大前提です。また、業者の都合ではなく、自分好みのしつらえ、自分が望むリフォームに対応してくれるかどうか。そして、予想以上の劣化箇所が判明した場合には、その解決のためのコストが適切に提示されること。その上で、改修後もメンテナンスなどを通じて長く付き合っていける業者を選び抜きたいものです」