家族が顔を合わせるリビング志向は
光熱費削減効果も

 一方、老朽化のみならず暮らしぶりの変化も、リフォームやリノベーションに深く関係してくるようだ。

「昔は家族の人数が多かったので、少しでも部屋数を増やしたいという考えが主流でした。しかし、今は少子化が進んで世帯の構成が変化しており、部屋数を絞って広々とした間取りを求める人が増えています」

 もちろん、団塊の世代の多くの家庭で子どもたちがすでに独立し、夫婦2人の生活に戻っていることも少なからず関係しているだろう。だが、時代によって人々が家に求めるものも明らかに変遷している。戦後の経済成長とともにプライベートな空間が切望されてきたが、最近は家族のつながりが重視されるという。

「かつては玄関に入ると、すぐに2階への階段が視界に入るという設計が主流でした。これに対し、最近はリビングを中心に据え、そこが各部屋とつながっている間取りが増えています。玄関からリビングを抜けて階段を上るなど、家族が必ずリビングで顔を合わせるようになっているわけです。家族がリビングで過ごす時間が増えれば、絆が深まるばかりか、実はそれだけ他の部屋を使わないわけですから、光熱費も抑えられます」

高まるリフォームニーズ
住宅総数が世帯数を上回る状況では、人々の意識もスクラップ・アンド・ビルドの新築志向から、手入れをして長く使うストック型へと変わりつつある。
政府の成長戦略でもリフォーム・流通市場拡大が掲げられ、環境整備に乗り出している。築20年で物件価値がほぼ0になる現在の木造一戸建て住宅の評価手法が改められれば、リフォームに対するニーズはさらに高まることが予想される。

現在の快適性と将来を見越した
柔軟性のあるプランを

 言うまでもなく家は生活の場であり、リフォームやリノベーションにおいては、「その空間でどのように暮らすのか」という発想も不可欠となってくる。

「家を建てる場合も、リフォームする場合も、たいがいは“今の生活”をベースに考えるものです。しかし、20年後、30年後、年齢を経て足腰が弱くなったら、段差の上り下りがつらくなるし生活動線も変わります。例えばウオークインクローゼットを車椅子で利用できるトイレに改築できるようにあらかじめ設計しておくなど、将来のさらなる変化も見据えたプランを練っておくと万全でしょう」