外国人の都心物件
購入は是か非か

オウチーノ代表取締役
社長 兼 CEO
井端純一 いばた・じゅんいち

同志社大学文学部新聞学(現メディア学)専攻卒。
リクルートを経て、『週刊CHINTAI『ZAGATSURVEY』取締役編集長などを歴任。2003年、オウチーノを設立。「新築オウチーノ」、「中古オウチーノ」、リフォーム業者検索サイト「リフォーム・オウチーノ」、建築家マッチングサイト「建築家オウチーノ」などを運営。著書に『広報・PR・パブリシティ』(電通刊)、『30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方』、『10年後に絶対後悔しない中古一戸建ての選び方』(共に河出書房新社刊)などがある。

 今年も「年末年始を海外で」というニュースが流れる季節になった。観光では、国内から海外へ出かけるものをアウトバウンドと呼び、海外から国内へはインバウンドと言う。

 アウトバウンドが盛んになると、「景気がよい」とされる。一方、国は政策として今後、インバウンドを増やそうとしている。インバウンドなら国内にお金が落ち、貿易としては「輸出」扱いになるからだ。

 インバウンドビジネスは、観光だけではない。近年、不動産が成長株だ。例えば東京都心の高級マンションを、外国人が盛んに買っている。あれも立派なインバウンド。私の会社が運営している物件情報サイトは、英語・中国語・韓国語に対応しており、「日本の物件を買いたい」という外国人の利用も多い。

 こうした流れを是とするか非と見るかだが、私はおおむね歓迎している。外国人が日本の不動産を買ったとしても、それを海外に持ち出すことはできない。不動産は文字通り「不動」であり、単に所有者が変わるだけだ。

 ただ、例外として北海道の水源地の森林を買い占めるなど、公共の利益に反する可能性が高い投資は規制すべきだ。

不動産・住宅業界の
長期成長を支える

 なぜ、不動産のインバウンド投資を歓迎するかというと、2014年4月の消費税増税以降の不動産市場を、活性化しうる大きな要因と考えるからだ。

 13年9月の中間決算を見ると、住宅・不動産業界はおしなべて好調で、大手総合不動産5社は経常利益2桁増となった。心配される建築費や労賃の高騰も、今期に限れば影響は軽微だ。

 しかし、肝心の購入希望者の給料が上がらぬうちに消費税8%に移行するのだから、今後の消費マインドを考えると不安がよぎる。たとえローン減税やすまい給付金が使えても、若者のクルマ離れと同じように住宅離れが起きてしまうと、業界全体が冷え込んでしまう。