「ロングテール」というマーケティングが注目されました。大量販売できないニッチ商品でも、高価格で確実に利益を出せる売り方ができるというものです。ビッグデータは、こうしたニッチ系商品の発掘を可能にし、さらにそれをより大量に売れる商品の企画のヒントに結び付ける情報となりえます。

 それはつまり、値下げをしなくてもよい商品です。人は欲しいものは高くても欲しいのです。それはまた、大量生産型の大企業が手を出しにくい商品を作ってヒットさせられるという意味で、中堅・中小企業にチャンスをもたらす可能性があります。

 例えばこの数十年、古着や古道具、古民家などに関心を持つ若者が増え続けてきました。そこには新しい市場へのヒントがある。しかし、こうした変化を敏感にキャッチし、時代の先を見通せるビジネスマンがいても、かつては「データの裏づけがない」と企画をボツにされるのが常でした。古着などの売上げを示すデータはないからです。

 しかしビッグデータは、そこに光明をもたらすのではないでしょうか。これまで軽視され続けたアイデア、着眼点に強力な武器がもたらされた、といってもよいでしょう。

個別で主観的、それでいて
セレンディピティを感じるマーケティング

 ビッグデータ分析で見えてくる「最大公約数」と「最小公倍数」の情報は、まったく異質な性質を持っています。

 最大公約数的情報とは、統計的に示すことができるものであり、普遍的で客観的です。どんな機能の洗濯機が好まれているかとか、どんな色の自動車が支持されているかといったものです。

 一方、最小公倍数的情報は、個別で主観的であり、例えば、「わび・さび」のように、なぜそれがよいのかわからない人にはまるでわからない性質の情報です。

 しかも最小公倍数の情報は、頻繁に購入履歴があるわけではなく、データそのものの量が少ない。言うまでもなく、データは、ある程度の量がたまらないと分析の精度が高まりません。ですから、現在のビッグデータには、最小公倍数的情報を見つけ出すまで、しばらく時間がかかるでしょう。

 さらに重要なのは、データ分析者の文化面でのリテラシーです。例えばですが、「利休の焼き物が好きな人は、BMWが好きだ」とか、「織部が好きな人ほど、強くフェラーリを望む」などという傾向がもしあるとしても、それは、文化に対する深い造詣がなければ分析できず、単なるデータ・アナリストには、とてもできない。その能力をどのように育てるかが課題になるでしょう。