世に先駆けて「環境経営」を提唱したリコーでは、自社の事業活動によるCO2排出の削減はもちろん、顧客に販売する製品、サービスによる環境負荷削減の取り組みも加速している。今日まで主力事業である複合機やプリンターの省エネ性能を飛躍的に向上させ、グローバルに高い評価を得てきた。2012年にはLEDランプを発売。工事不要の利点を活かし、従来はLED導入が難しかったテナントビルや店舗などでの導入も広がっている。

 リコーは、1976年に環境推進室を設立し、98年には世に先んじて「環境経営」というコンセプトを打ち出して、グループ全体でグローバルに活動を推進してきた。

「環境経営とは、『利益創出』と『環境保全』の同時実現であると定義しています。特に地球温暖化防止については、自主的に高い目標を掲げて積極的に取り組んできました。東日本大震災以降、エネルギーの効率利用を求める声がさらに高まっており、社会全体の環境負荷削減とお客様の生産性の向上の両立を支援する製品やソリューションの提供がますます重要になっていると感じています」(リコー CSR・環境推進本部企画室)

 早くから環境保全を意識した経営を行ってきた同社だが、「2020年までにCO2排出総量を30%削減(00年比)」という高い目標を掲げている。この目標には、自社工場やオフィスが排出するCO2のみならず、顧客の複合機やプリンターの使用に伴うCO2も含まれる。

社会的課題を解決する
「価値創造CSR」

 一般に企業の事業活動は、「調達、生産、輸送、使用、廃棄」という段階に分けられるが、各段階でエネルギーや資源を用いており、必然的にCO2が発生する。

 地球温暖化防止のために世界レベルでCO2排出量の削減が求められる中、企業には、事業活動全体でのCO2の把握、削減がより一層求められるようになっている。リコーでは、国際的な基準に則ってサプライチェーンの温室効果ガス排出量を把握している(グラフ参照)。その結果、顧客に製品が渡った後の段階での排出量の割合が大きいことがわかっている。

「生産という自社の裁量が及ぶ範囲だけでなく、省エネ製品の提供などで『お客様先の環境負荷削減』にも力を注ぐことではじめて、環境保全と利益創出が同時に実現できると考えています」(同)

 同社では、このような社会的な課題解決に結びつく企業活動を指して「価値創造CSR」と定義している。

工事不要の
LEDランプを開発

 同社では、複合機やプリンターの省エネに留まらず、より幅広く省エネやCO2削減を可能にしようと、エコソリューション事業を立ち上げた。12年1月には、その第一弾として工事不要の直管型LEDランプ「クラーテ」の発売を開始した。

 クラーテの最大の特徴は、設置工事が不要なこと(※1)。蛍光灯を取り替える感覚で、既存の照明器具にそのまま取り付けることができ、導入に伴う作業の省力化や既存設備の有効利用ができる。

「09年の当社調査で、オフィス占有スペースでのエネルギー消費で、照明が占める比率は37%もありました。手軽に導入でき、取り付けた瞬間から節電になる工事不要のLEDは、お客様のニーズと環境保全の両方にマッチすると考えました」(リコー ビジネスソリューションズ事業本部 ECSマーケティンググループ)

※1 法定耐用年数を超えた蛍光灯器具は工事が必要な場合があり、リコーでは交換を推奨している。なお、対応安定器であっても一部点灯しない場合がある。