接遇力は個人の力に
左右されるというイメージ

 日本ならではの「おもてなし」に注目が集まる昨今、前出のような例を挙げれば、「それは確かに必要だ」とうなずく経営者は多いだろう。一方で、個人の人間力に頼る部分の多い接遇力を高めることが容易ではないことを想像し、結果、「個人の力量によるもの」と諦める向きもあるだろう。では、接遇力を伸ばすために、企業は何ができるのだろうか。

 浜田氏は、接遇力を高めるためには、個人の資質を問う前に、社員が気持ちよく、安心して、生き生きと働ける環境を整えることが不可欠であるという。

「接遇力とは社員一人ひとりの個性を生かしてこそ高められるものです。強制ではなく、自発的に、お客さまとの人間的な関わりを大切にする姿勢をつくることが重要です。そうしたことが、ギスギスした雰囲気や、学び合えない人間関係の職場で培われることはないでしょう」

 もう一つ、接遇力を高めるために企業がやるべきこととして挙げられるのは、企業トップが、顧客への向き合い方について自社はどうするべきかの指針を決めることだ。

「うちの病院では、患者さまが、こんなところにも気づいてくれるのかと思うようなささいなところまで、しっかり寄り添ってケアをしていこう」
「ウチのホテルのサービスは、簡易かつ安価にするいっぽうで、個人的なご要望はお申し出に合わせて、オーダーメード的に対応していこう」
「わがレストランでは、注文を取る際に、本日の鮮魚の入荷情報と共に、魚の知識をみんなが勉強してお伝えできるような、食のプロ集団となろう」

 こうした指針を企業のトップが決めると、そのためには、どのような接遇が必要で、そのために必要な接遇力を、どのように高めるかの方法を全社一丸となって探る姿勢が生まれる。