伝えたいことをより確実に伝えるための
アイコンタクトの技術

 最後に、「届ける」とは、顧客の要望を、「気づく」と「聴く」によって把握した後、どのように顧客の心に伝えたらよいかに関する能力だ。顧客の要望を前提に「おもてなしの気持ち」を形として表す、行動として示すことが「届ける」ということ。重要なのは、こちらが一方的に行う行為ではなく、心遣いとして、相手の心に確実に届いていなくてはならないこと。顧客に認知してもらって初めて「届ける」行為が成立するのだ。

 相手の心に届けるためには、アイコンタクトが重要だと浜田氏は言う。

「目は、口ほどにものをいうという言葉があるように、人の気持ちは、目にそのまま表れます。例えば、店舗で、社員から『ありがとうございます』と言われた際に、こちらも相手の目を見てみてください。社員の口元や目元が緩むのを感じることができるでしょう。単にマニュアル通りに言っているだけでは、『届ける』ことにはなりません。相手の目を見てしっかりと気持ちを込めて、お客さまに心から感謝を伝えたい気持ちを形として示して、初めて『届ける』と呼べるのです」

 アイコンタクトの効果には、伝える相手を目の前にいるあなたに限定するということがある。アイコンタクトを行うことで、この社員は自分の言っていることを真剣に聴いてくれていると顧客に理解されるという。

「ただし、アイコンタクトが重要だからといって、相手を凝視し続けていると、威圧感を与えかねません。相手の鼻のあたりにずらして、ここぞという大切な場面で、相手の目に戻すといった、リラックス感のある雰囲気に配慮することも、接遇力には重要です」と浜田氏は指摘する。

 接遇を理解するために、接遇を構成する三つの要素「気づく」「聴く」「届ける」を説明したが、さらに「感じがいい」「サービスがいい」という顧客の評価を生み出し、接遇力が企業イメージを高めるために、接遇力をさらに向上させる大事な八つのポイントを紹介する。「気づく」「聴く」「届ける」が主役であれば、八つのポイントは補佐役的なものといえるだろう。主役と補佐役の機能を共に社員が実践できるようになって初めて、顧客に十分な接遇を行うことが可能となる。

 次回は、「今日からでも接遇力を高められる八つのポイント」について、浜田氏のレクチャーを受けながら、「接遇力」を掘り下げていく。