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アジア地区特許担当副社長
K.I.T.虎ノ門大学院客員教授
弁理士・法務博士木越 力氏
テクニカラーはかつてBtoC企業だったが、10年ほど前からBtoBへのシフトを進めてきた。ビジネスモデルの変化は、知財活動にも影響を与えているようだ。「BtoCに比べて、BtoBは係争が少ない。競合企業と争うこともそれほどありません」と木越氏。一方、環境変化の加速が難しい問いを投げかけてもいるという。
「今日、多くの企業がオープン&クローズ戦略をとっていますが、そこで重要なことは何をクローズにして、何をオープンにするかということ。長期にわたってビジネス環境が安定していれば、その選定は比較的容易だと思います。しかし、変化の激しい現代には、事業そのものが次々に変わっていきます。先々を見通してクローズすべき権利を特定することは、ますます難しくなってきています」
国際標準化の動きと
模倣品対策
最後に、K.I.T.の加藤浩一郎教授の司会で三人のスピーカーによるパネルディスカッションが行われた。テーマの一つは標準化への対応。これについては、業界ごとの違いが大きいようだ。自動車業界については、佐々木氏が「自動車メーカーはこれまで、標準化に重きを置いてきませんでした。自社技術をデファクトにしようと考える傾向が強い」と説明。これに対して、エレクトロニクス業界では標準化を志向する企業が多いようだ。その際のポイントとして、木越氏は次のように語る。
「国際標準が決まるまでは通常、1年から3年かかりますが、その議論が始まってから対応しても遅い。議論の方向を予測して、いち早く特許を出願することが重要。ある意味では、時間との戦いです」
模倣品対策も知財における大きなテーマだ。特に、新興国市場で苦労しているグローバル企業は多い。
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「ビジネスソフトウエアの分野では、日本では全体の約20%、中国では約80%が模倣品と言われています。グローバルでの対策は非常に重要」と阿部氏。自動車メーカーにとっても模倣品対策は切実だ。佐々木は次のように語る。
「例えば、コストをかけて部品の模倣品対策を強化した場合、純正品の売上増などの効果をどの程度得られるのか。費用対効果を測定するのは非常に難しい。ただ、安全を守るという取り組みは必須です。ニセモノのエアバッグでドライバーがケガをするといった事故は防がなければなりません」
先進国市場の低成長、新興国市場の急成長というトレンドは今後も継続すると見られる。知財活動は複雑化し、高度な知財マネジメントが求められるようになるだろう。講演した三人に続くような知的財産のプロフェッショナルが続々と生まれることが、日本の産業界からも期待されている。