商品やサービスを提供したにも拘わらず、代金を支払ってもらえない相手に直面した場合、皆さんはどのように対処しているだろうか。商取引の区切りであり、重要な業務である「回収」について、なるべく速やかに、ローコストに実施することは経営の大きなテーマといえる。回収のリスクをできるだけ小さくする仕組みづくりについて、新横浜アーバン・クリエイト法律事務所の弁護士である田沢剛氏に聞いた。
田沢 剛氏
――売掛先に代金を支払ってもらえない場合、まず、何から始めればいいのでしょうか。
田沢 ケースによって違ってきますが、基本的な手順としては、支払いの遅延が発生してしまった場合、まずは口頭による督促を行いましょう。その場合でも、経過を一覧表にしておくとよいでしょう。
口頭による督促を数回経ても支払いがない場合、内容証明郵便による督促を行います。配達証明付きが一般的ですが、この作成や送付から弁護士に依頼することも可能です。費用としては、弁護士名の表示のない内容証明郵便の作成料は1万~3万円、弁護士名の表示のある場合は、3万~5万円が目安となるでしょう。ただ、この書式はある程度決まった形ですので、文例にのっとって自ら行うことも可能です。
――内容証明郵便による督促を行っても、代金が回収できない場合は、どうすればいいのでしょうか。
田沢 こうした手段を用いても好転しない場合、民事調停をはじめとする法的措置を講じることになります。民事調停では、裁判所の調停委員が間に入り、最終的に話合いにより支払い方法などを決めます。内容(条項)が確定した場合には、確定判決と同一の効力を持つ調停調書というものにまとめられ、もしも、相手方が調停条項に従わない場合には、強制執行が可能となります。調停が最終的に合意に至らない、あるいは相手方が調停そのものを拒否する場合などは、調停不成立となって手続は終了します。
また、簡易裁判所(書記官)から債務者に対し、売買代金の支払いを命じてもらう支払督促というものもあります。これは、裁判所に対し、支払督促の申立てをすることにより、裁判所が債務者に対して、「支払督促」といった書面を送付してくれるものです。ただ、支払督促の申立てに必要な書類の作成は、そう難しいものではなく、簡易裁判所の窓口で教わることができます。債務者側が支払督促を無視するなど、返答がない場合もありますが、その際には裁判所に対し一定の期間内に、支払督促に「仮執行宣言」を付けるよう申立て、強制執行をすることも可能になります。
ここまでは、どちらかというとソフトな手段ですので、わざわざ弁護士に依頼するほどの難しいものではないと思います。弁護士の法律相談で手続についての説明を受けた上で、ご自身で申立てをすることも十分可能です。