2014年4月、JTBグループ全体の国内旅行に関する仕入・商品企画・商品造成を目的とするJTB国内旅行企画がスタートする。観光業をめぐる環境が厳しくなる中で、新会社は国内旅行市場をどのように拡大させていくのか。社長就任予定の大谷恭久氏にビジョンや戦略を聞いた。

 少子高齢化によるマーケットの縮小、インターネットの普及に伴う消費者ニーズ・販売店ニーズの多様化、グローバル化の進展など、観光業をめぐる環境が大きく変化している。  こうした変化に対応すべく、業界のリーディング企業であるJTBも自らの姿を変えようとしている。JTBグループでは、北海道から沖縄まで地域別に事業会社を持ち、各地域事業会社が国内旅行商品の仕入・商品企画を担ってきた。この全国の仕入・商品企画部門を一つに統合し、独立会社化するのだ。

新たな価値を発掘し
商品化する

株式会社ジェイティービー
取締役 旅行事業統括
国内商品事業本部長 大谷恭久
(株)JTB国内旅行企画 代表取締役社長(4月1日就任予定)

 この4月に発足するJTB国内旅行企画は、売上高約3000億円、社員数約1000人という国内最大規模の商品企画会社となる。社長就任予定の大谷恭久氏は説明する。

「仕入・商品企画の各部門を一体化したことで、より迅速に市場のニーズに応えていくことが可能になるとともに、戦略的な投資や、スケールメリットを生かした効率的な事業展開が行えるようになります。この体制を生かして、国内旅行の活性化を図ると同時に新たな価値と需要を創造し、JTBグループがこれまで推し進めてきた交流文化事業・地域交流事業の完成を目指します」

 JTB国内旅行企画が目指す、新たな価値と需要の創造とは具体的にどのようなものか。それはJTBグループが、ここ数年取り組んできた例を見ればよくわかる。

 たとえば「日本の魅力再発見」をテーマに1998年より継続してきたキャンペーン「日本の旬」。半年ごとに対象地方を選定し、掘り起こした各地の旬の魅力を、旅を通じてより多くの人に体験してもらおうという企画だ。地域資源を活用してその土地ならではの魅力的なコンテンツを開発し、必要なインフラや条件を整え、持続可能な仕組みをつくることで地域活性化に貢献している。

新たな価値を創造して地域活性化につながった「日本一の星空 ナイトツアー 天空の楽園」で見られる長野県阿智村の星空

 よりわかりやすい需要創造の取り組みとしては、長野県阿智村の「日本一の星空 ナイトツアー 天空の楽園」がある。環境省が実施する全国星空継続観察で「星空が最も輝いて観える場所」1位に認定された阿智村だが、夏場の観光の目玉は少なかった。そこでJTBが「スキー用ゴンドラに乗って夏の夜空を観察」という新しい価値を提案。シーズンオフにおける観光客の大幅増加につながった。

 団体旅行でも新たな価値を創造しており、そのヒット商品が「地恵のたび」だ。東大阪や燕三条といった国内を代表する地場産業の現場で、モノづくりの心とこだわりを体験するツアーなどを提案する商品だ。地域の特性・特産物などを生かしてアイデアあふれる町おこしに成功した事例を訪ねることで、新たな地域活性化に役立ててもらおうという狙いだ。