JTBグループでは、グル―プ本社観光戦略チームを軸に、全国の各支店がDMC※の役割を持ち、観光開発プロデューサーが中心となって地域の魅力・素材を掘り起こし、磨き上げ、発信していくという地域交流事業を積極的に進めてきた。その成果がこれらの成功事例となって表れている。今後、各地のDMCとJTB国内旅行企画が密接に連携し、新たな企画を次々と打ち出していくことになるだろう。
これらの他にも、日本文化を再発見できる商品も多く生まれている。例えば世界遺産の広島・厳島神社で開催した「宮島狂言」鑑賞、京都・醍醐寺での雅楽鑑賞、島根・出雲大社での奉納コンサート鑑賞など、由緒ある場所でのイベントと旅行を組み合わせた企画だ。宮島狂言では鑑賞後に「感謝の夕べ」と称して、出演者や地元の人々との交流会を開催した。普段から地域ネットワークの構築に取り組んできたからこそできる企画といえる。商品企画を担当した東日本国内商品事業部の長田匠史課長はこう説明する。
「イベントと旅行を組み合わせた企画では、特に新規のお客さまに多く申し込みを頂き、新たな需要を創造したことを実感できました。日本には国内外を問わず多くの人にとって、魅力的な歴史や文化がまだまだたくさんあります。これらを旅と組み合わせ、エンターテインメント・ツーリズムという新たなジャンルとして、今までにない商品を生み出していきたいと思います」
お客さまの声を基に
高い品質を約束
新会社では組織構築と同時に、既存事業の改革にも挑戦している。同社が取り扱う商品には、パッケージ旅行の「エースJTB」、団体旅行の「Aユニット」、「宿泊」商品、ウェブ販売の「るるぶトラベル」などがあるが、あらゆる側面から、これらの商品の質的向上を図ろうとしている。
例えば「エースJTB」では、年間50万枚を超える顧客アンケートの集計結果を基に、宿泊施設、広さ、眺望、食事などの基準をお客さまへの「6つのお約束」として設定。「和室は10畳以上」「温かい食事は温かいうちに出す」など、品質や満足度の高い商品提供を顧客に約束している。宿泊施設との連携がなければ実現できない取り組みだ。さらに、レイアウトを見やすくし、フォーマット化するなど、パンフレット改革も進めている。
今後は、新領域への挑戦として、2020年東京五輪を視野にインバウンド事業の拡大にも挑戦する構えだ。大谷氏は新会社設立への思いをあらためて語った。
「当社の最大の強みは人財。この人財に磨きをかけ、社員一人ひとりがイノベーション志向を持つことで、国内旅行の新しいスタイルを創り出し、インバウンドを含む新たな市場を拡大し、観光立国を実現するという、当社グループのミッションを実現していきます」