ユーザー視点でデータを
可視化した注目のテーマ

 各チームが開発した作品は、5分という短い持ち時間の中で発表され、審査された。審査員には、日本のデジタルコミュニケーション界の先駆者たちが招かれた。

 乾健太郎(東北大学大学院情報科学研究科教授)、及川卓也(Google シニアエンジニアリングマネジャー)、櫻田潤(インフォメーション・デザイナー)、佐藤尚之(コミュニケーション・ディレクター)、立薗理彦(ポリタス・エンジニア)、高田圭子(朝日新聞社 デジタル編集長)の各氏だ。

 8つのチームのうち、準グランプリ、グランプリを受賞したチームの発表内容は次の通り。

■防災チーム 「WEATHER MONSTAR」 準グランプリ
気象警報や注意報は、多種で複雑。こうした防災情報を「いのちを守る」行動に活用するを目的に、しかも子どもをターゲットに気象警報学習アプリを開発した。平時は、スマートフォンを振ると警報や注意報を漫画で表した「モンスターカード」が現れる“ゲーム”として使用し、遊び感覚で気象の知識を身に付けてもらう。「モンスターカード」は、地域ごとや月ごと出やすい警報・注意報の確率によって、どれを表示するかが決定される。また、実際に警報や注意報が出された際は「新モンスター」のアラートで過去の被害記事を読んだり、大人に情報を伝えるといった「ミッション」を遂行させる仕組みを設計。こうした子どもの注意喚起が、大人の避難行動にも結び付く導線となることで、地域全体の防災意識を高めることにも。

■医療チーム 「データで透明化する医療」グランプリ
日本人に多く、要介護につながる後遺症の原因第1位ともいわれる「脳卒中」を例に挙げ、厚生労働省のデータを基に全国648病院を集計して、治療に要した日数(入院期間)を年々短くしている病院の評価を行った。同省のデータによれば、治療に要する日数が8.1日の病院もあれば、44.8日という病院もあるという。医療チームは、ここ数年で治療日数の短縮に成功した病院では、「脳卒中ケアユニット」の導入で患者を24時間体制で受け入れる体制をつくったなどの改善要因があることを発見。こうした病院を、一般市民が「治療したい体の部位」「居住地」を入力するだけで、「治療日数が短い」を基準に「近くの良い病院」を探すためのWebアプリを開発。医療の質を高めるために、病院の努力が患者から評価されるデータ活用の方法を問いかけた。

――この他にも、「少子高齢化」をテーマに、全国1800自治体の人口や高齢化率などをビジュアライズしたアプリや、「本はどこにむかっているか?」をテーマに、公共図書館がどう整備されてきたのかが一目でわかるようにした「日本地図」などのプレゼンが行われた。