日常使用と停電時稼働の両立を可能にした技術
「ビジネスインクジェット」
頼もしい複合機の開発を可能にしたのは、停電時稼働を維持できる技術力である。その象徴が「ジェルジェットテクノロジー」だ。
インクジェット方式のプリンターは、インクを紙に吹き付け、紙を移動させるだけのシンプルな構造。レーザープリンターのように熱を使わないので消費電力が少なくて済む。ただし、通常のインクは、マーカーを引いたりする際ににじみが発生する。そこでリコーが開発したのが、ジェルジェットインクだった。
これは、インクジェット方式で普通紙に高速高画質印刷でき、マーカーなどの書き込みでにじみが生じない。コストはカラー印刷で1枚7・5円止まり。
「ビジネスの現場でもインクジェット方式のプリンターを利用していただけるだけの商品の耐久性や使いやすさを確保し、いわゆる“ビジネスインクジェット”の分野を開発してきたのがリコーでした」(福留氏)
ビジネスプリンターとして普段使いをしながら、停電時にも頼もしい機能を提供する「SG3120B SF」。すでに予備電池が発売され、専用の充電器も6月には発売する予定だ。
2011年の震災時、リコーは、被災した自治体や医療機関にジェルジェットプリンターと無停電電源装置を提供して、事業継続を支援した。その経験から停電時稼働の複合機が生まれた。2013年9月には、コピー機ベースの複合機に蓄電池を外付けした商品を販売。「SG 3120B SF」は、デスクトップタイプの複合機として、アイデアをさらに進化させた商品だった。
「A4判の小型で軽量であるメリットを生かし、どのような企業や組織でも大災害発生に対して事業継続が図れるソリューションをご提供できたと自負しています」(福留氏)
事業継続で高画質な印刷物や通信機能が果たす役割は大きい。停電でも眠らない「SG 3120B SF」は、まさに“コロンブスの卵”的発明だ。