余談であり、極めて有益な情報だとは思うが、マルティン・ヴィンターコルン氏がアウディのCEOに就任したとき、最初に着手した取り組みが設計の標準化であった。氏は、この設計の標準化の取り組みで何かを感じ取ったようだ。ヴィンターコルン氏の元でMQBを推進している某取締役も、もともとアウディでその設計標準化を一緒に推進していた。
後にヴィンターコルン氏とその取締役がVW(フォルクスワーゲン)に移り、VWとアウディの間で共通化の取り組みを始めたことは、必然的結果であった。要素技術は同じなので、チャンピオン化された設計技術に変数を加えれば、横串をさせると踏んだのだ。
「モジュール化はつまらない」は間違い
すり合わせの構造化が新たな価値を生む
ただ、こうしたモジュール化の流れに対して、漠然と「モジュール化のままでいいのだろうか?」と不安に感じている人は多いはずだ。また、技術者魂が揺さぶられずに、「技術者として楽しくない」と不満に思っている人も多いはずだ。
一般的に「組み合わせ型の技術」は競合他社に真似されやすく、コモディティ化が進みやすい。それに対して「すり合わせ型の技術」は真似されにくく、コモディティ化も進みにくい。しかし、すり合わせ技術には「品質が安定しない」「時間を要する」「コストがかかる」などの課題もある。この二律背反を解決し、良いとこ取りの手法が「超高速すり合わせ型モノづくり」である。
「超高速すり合わせ型モノづくり」とは複数の概念で構成されているが、今回はその1つを紹介する。以下の図を参照してもらいたい。

図の「Before」は設計の全行程において手戻り、あるいはすり合せが発生していることを表している。「After」はすり合わせを構造化することで、設計のプロセスを大きく3つに分解している。「全体粗構想」「全体構想」「部位別構想」の3つである。そうすることで、工程をまたぐ手戻りが発生しないようにしながらも、各工程内では積極的にすり合わせを実施することを目指している。



