この2年、日本を代表する家電3社のパナソニック、ソニー、シャープは業績の低迷に苦しんできた。四半期毎の決算発表後、メディアでは家電3社の苦境ぶりが大々的に報じられてきた。今期はどうなるだろうか。当期利益だけを見れば、黒字化する可能性が高く、この2年とは違った報道がされるだろうが、3社にはまだまだ課題も多い。止血のメドは立ったものの、今後、継続的に十分な利益をあげつつ、将来の成長に向けた投資を行う姿がまだはっきりとは見えてこない。以下、3社それぞれの課題を整理する。

評価に値するシャープの
営業利益1000億円到達見通し

次なる稼ぎ頭は何か? 最悪期は脱したものの<br />再成長路線転換にはまだまだ課題山積の家電3社<br />——中根康夫・ドイツ証券シニアアナリストなかね・やすお
2001年9月、ドイツ証券入社。アナリスト経験は20年以上に及び、うち5年間は台湾台北において台湾・中国のエレクトロニクス産業の調査・分析に従事。13年の米 Institutional Investor ランキング(エレクトロニクス/民生用電機)で1位、日経アナリストランキング(家電・AV機器)で2位。上智大学卒。日本証券アナリスト協会検定会員。

 シャープは14年3月期の営業利益が当初計画800億円を上回る1000億円に達する見込みとなった。

 液晶パネル事業では円安メリットを享受、太陽電池では政府による固定価格買い取り制度(フィード・イン・タリフ)を背景にした特需の恩恵など、強運に恵まれたことは事実である。しかし、高橋社長新体制の下、実際に業績を急回復させている点、第2四半期から全てのセグメントで営業黒字を維持している点は、評価されるべきであろう。

 収益回復の最大の要因は、既存工場の最大活用(稼働率上昇)や円安などによる増収と、976億円にも及ぶ大幅な固定費削減(第1-第3四半期)である。

 会社側の説明では、円ドルレートの収益に対する影響は、「健康・環境」(白物家電)や「太陽電池」のように円安がネガティブに作用する部門と、「液晶」や「電子デバイス」のようにポジティブに作用するする部門が相殺し、会社全体ではニュートラルとの認識である。

 しかし筆者は、今期については、最大の懸案事業であり赤字が続いてきた「液晶」事業が受けた円安の恩恵は、「健康・環境」などへの悪影響を大きく上回っていると見ている。