「皆さん、人工衛星は最先端の技術の集合体と思われていますか? 違います。実際は既存技術の集合体なのです。新しい部品や技術は信頼性が低いので、使えません。人工衛星の開発には何十億円とかかります。打ち上げて『失敗した』では許されない。だから、確実で実績のある技術で素晴らしいものを設計する。これが本当の技術者冥利なのです」

 また、任天堂のゲーム機「Wii」がセンセーショナルなデビューを飾ったときに、任天堂の開発者は「Wiiの部品は秋葉原で手に入るものが大半です。Wii用に新規に起こした部品は1割前後です」と話していた。一方、プレイステーションはエンジンに該当する半導体に3桁億の投資を行った。ゲーム機として当時の収益に差が出たのは必然的結果だ。

 スポーツに例えれば、結果を残すプロ選手ほど基本練習を大切にし、二流選手ほど革新的な練習方法を探そうとすることに似ている。成長や成功に奇策はない。往年の王貞治選手は、練習後宿舎で毎日1000回の素振りを自分に課した。世界記録も地道な鍛練の積み重ねによるものなのだ。

 開発も奇抜な発想ではなく、基礎技術の組み合わせが重要だ。だから開発力を高めるためには、基礎の再学習が大切である。真理は足もとにあるのだ。

 弊社のカリキュラムの1つに、「解析主導型設計」がある。この根本には、「設計とは設計便覧と関数電卓を駆使するもの」という考えがある。よって、弊社のクライアント企業の現場には、設計の基礎中の基礎を再び学び直すよう、アドバイスしている。力学の数式を覚えるのではなく、その数式の意味を再確認する。実験結果からの考察を勘に頼らず、設計の基本に立ち返り解釈する。手前味噌ではあるが、筆者が親しいある開発者の方は、この取り組みでスランプを脱出し、その企業で初の機構を生み出すことに成功して、プレジデント賞を受賞した。

「超高速すり合わせ型モノづくり」の
一端は基礎技術の高速すり合わせ

 勘の良い読者はお気づきだろうが、「超高速すり合わせ型モノづくり」のもう1つの要諦は、開発を行うときに、従来の数倍の量の組み合わせ検討しながら、遊びのような検討も行い、イノベーションの切り口を探すことだ。

 今回は、モジュール化の変遷と従来のモジュール化の落とし穴、そして最新のモジュール化の着眼点に触れながら、「超高速すり合わせ型モノづくり」の構成要素の一端を紹介した。次回以降は、「超高速すり合わせ型モノづくり」のキモである、設計の棚卸しやチャンピオン化の具体的な実現手段に触れたいと思う。

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