〝質〟で勝負する
商品開発と接客サービス
オムニチャネル時代にあっても、村田社長が最も重視するのは〝質〟である。
「リアル店舗における商品と接客によってお客さまが受ける実感、共感。つまり質の高い商品開発や人間的なものが最終的には小売業としての成功の鍵になる」と強調するように、セブン&アイのPB商品「セブンプレミアム」はとことん質を追求した商品を展開する。
PB商品の戦略目標を立て、本格的に乗り出したのは2006年夏のことだった。
「当時のマーケットでは、PB商品は安さの演出が常識でした。しかし、お客さまが本当に望んでいるのは、『少し高くてもいいから、ちょっとおいしいもの』ではないかと考えたのです。商品開発に際しては、外部メーカーの協力を得て、従来のPB商品の常識を覆したのです」(村田社長)
協力メーカーに対しては、「その技術力とセブン&アイの顧客情報を組み合わせることで、最強の商品ができる」と理解を求め続けたという。この考えが広く受け入れられ、消費者に商品が浸透し始めたのはセブンプレミアムを発売して2~3年後だった。もちろん、売れなかった商品もある。
最近は、専門店と同等以上の味・品質を絶妙の価格で提供する「セブンゴールド」も人気を呼んでいる。その代表格が、しっとりもっちりした食感で甘味のある食パン「金の食パン」だ。価格は2枚切り128円(税込み)、6枚切り256円(税込み)と高めの設定だ。
「金の食パンは、通常の食パンの倍の価格です。それが現在、年間3000万食を超える人気商品へと成長し、売上げは50億円を超えます。お客さまからの『サクサク感がほしい』『しっとり感がほしい』などという声に耳を傾けながら3度にわたり味を変更してきました」(村田社長)
金の食パンが東の横綱なら、西の横綱に当たるのが〝1杯ごとに挽き立てをドリップ〟が売りの「セブンカフェ」だ。価格はレギュラーサイズであればホットもアイスも100円(税込み)、ラージサイズはホットが150円(税込み)、アイスが180円(税込み)。豆煎りの改革をして、高い品質を維持しながらコストダウンを果たしたことが受け入れられ、いまや年間4.5億杯を販売する大ヒット商品だ。
村田社長は、コストダウンに関する方法や考え方についても、セブン&アイがPB商品の常識を覆したと言う。「従来のPB商品は、宣伝をしない、パッケージを簡略化する、大量にセンターに自分で仕入れる、だから安くできるといわれていました。しかし、パッケージの簡略化でどれほどのコスト削減につながるでしょうか。大量に仕入れて、本当に時代の変化に対応できるのでしょうか。それよりも売り切る力が重要です。そのためにも、お客さまに受け入れていただける上質な商品が必要。さらには、そうしたことを意識して販売できる販売力が必要。それらが組み合わさることによってコストダウンは図れる。最大のコストダウンにつながる方法は、在庫を残さないこと。これを徹底することです」。
かつて消費者は、セブン-イレブンの「あいててよかった」というメッセージを心地よく受け入れた。そして今、セブン-イレブンが送るコンセプトは「近くて便利」である。主要客は男性客から、高齢客層や有識主婦層へと広がり、セブンプレミアムの充実などにより、品揃えが拡充し目的買いが可能な店舗へと変貌を遂げている。