しかし、「奢れるもの久しからず」か。ダウンサイジングの波を読み誤り、デルやコンパックのIBM互換機にその座を譲ることとなる。1990年代には、初めてのリストラも経験する。そしてルイス・ガースナーをCEOに迎え、大改革に着手する。

 「今この会社に“ビジョン”なんてものはいらない。会社が生き残るには、大口法人顧客を手取り足取り相手にし、顧客の声を実現していくしかない」

「ハードは儲からない」
ソフトに舵を切ったガースナー

 ガースナーは内向きで、かつ官僚的なIBM組織を、顧客目線の企業に変えようとした。顧客の声に耳を傾けると、IBM自慢のメインフレームをはじめとするハードではなく、ソフトやサービス領域に強い需要があることがわかった。大手会計事務所のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)のコンサルティング部門の買収を手始めに、ハード中心からIT/サービス中心へと大きく舵を切った。ThinkPadのレノボへの売却も、この流れの延長線上にあった。

 「ハードは儲からない。これからは、ソフトやサービスだ」 

 ガースナーはそう宣言し、IBMは復活を果たした。

 アップルのティム・クックCEOは、アップルの使い勝手の良いハードと、IBMの法人向けソフト、販売網が組めば素晴らしい世界が描けると訴えるが、そのハードはIBMが自らの浮沈のために、涙を呑んで削り落とした領域なのだ。

 ここで両社の補完関係を、「Forest Map」でマッピングしてみたい。

 IBMがリストラの目玉として切り捨てた領域を、アップルが担当する。IBMは新注力領域であるソフト・サービスに継続してフォーカスしようとしている。IBMにとっては、なんとも美味しい提携である。

 アップルももともとはハードメーカーだ。初号機「AppleⅠ」はお世辞にもヒット作とは言えなかったが、転機が訪れたのはAppleⅠの後継機だった。

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ソフトで稼ぎハードに投資する業態へ移行したアップル

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