九州長崎の西方100㎞に浮かぶ、大小140あまりの美しい島々。五島列島。その中で、南西部に位置する島々からなるのが五島市だ。

 奈良・平安期には遣唐使の寄港地となり、中世以降は海外貿易の拠点として栄えた歴史ある地域だが、じわじわと過疎化が進み、現在の五島市の人口は約4万人。市民の30%が65歳以上という高齢化率の高い地域となっている。

 行政区の全体が離島である五島市は、福江島、奈留島、島山島、前島、久賀島、蕨小島、椛島、赤島、黄島、黒島、嵯峨島という11の有人の島でなりたっている。

 このうち、飛行機やフェリーなどで本土と直接の交通の便があるのは福江島、奈留島の大離島(一次離島)のみ。こちらは、病院や診療所、薬局・薬店があり、医療体制も整っている。

 それ以外の9島は、「離島の中の離島」とも呼ばれる小さな離島(二次離島)で、本土への直接の移動手段はない(ただし、島山島は福江島と橋で結ばれている)。比較的人口の多い久賀島、椛島には診療所はあるが、それ以外の地域は無医村で、薬局・薬店も存在しない。いわゆる僻地(へきち)で、日常的な医療の確保が困難な地域に分類される。

 そこで、五島市では、僻地での医療を円滑に行うために工夫を凝らしており、そのひとつが小離島の住民を対象とした「おくすり説明会」というユニークな取り組みだ。その中心にいるのが、長崎県薬剤師会理事・離島対策委員会委員長で薬剤師の平山匡彦さん(福江島で「ゆうとく薬局」を経営)だ。