6月に政府が決定した規制改革実施計画では、健康・医療分野でも進展がみられた。ここでは国民に関心の高い「患者申出療養制度」を中心に、その検討の背景や内容を紹介する。保険外併用療養費制度(いわゆる混合診療)の改革に対して、裕福な患者を優遇すると懸念する声があるが、むしろ新制度は保険外診療を切実に望む必ずしも裕福でない人にとってこそメリットは大きい。
規制改革実施計画のポイント
1982年 慶應義塾大学経済学部卒業、84年同大学大学院経営管理研究科修士課程終了後、日本銀行勤務、92年 より日本総合研究所。主席研究員、理事等を経て14年 同 副理事長。規制改革会議健康・医療WG座長。京都大学 博士(経済学)。近著に『不安定化する国際金融システム』(NTT出版、2014年)
6月に成長戦略と合わせて決定・公表された規制改革実施計画では、健康・医療分野でも進展がみられた。規制改革会議は、国民にとって安心な健康長寿社会を築くことを大きな目標として掲げ、国民の安心・安全を前提として、①国民の利便性の向上、②健康・医療関連産業の発展、③保険財政の健全化を念頭に、多くの制度について厚生労働省等と議論を重ね、それらの内容の答申を行い、閣議決定に至った。
具体的な成果としては、「国民のニーズへの対応」という観点から、患者申出療養(仮称)の創設、革新的な医薬品等の価格制度の改善、医療用検査薬から一般用検査薬への転用の仕組みの早期構築等、「最適な医療提供体制の構築」を目指す観点から、プライマリ・ケア体制の確立、在宅診療を主として行う診療所の開設要件の明確化等、また、「サービスの質の向上と事業者等のガバナンス強化」という観点から、医療においては医療機関の質に関する評価の取り組みの拡充、レセプト(診療報酬請求明細書)データの活用促進や保険者による事前点検制度の導入等、介護・保育においては、社会福祉法人の情報開示、社会貢献活動の義務化等に取り組んだ。
中でも、患者申出療養制度の創設や社会福祉法人の経営管理の強化等は、重要な改革と思われ、国民の関心も高い。以下では、規制改革会議の委員である立場も踏まえ、患者申出療養制度の検討の背景や内容を紹介したあと、その他の重要な改革について述べる。