デジタルマーケティングの重要性が指摘されて久しい。だが、これを本当の意味で生かすことができている企業は少ない。「〝会社の顔〟である『オウンドメディア』を含むメディアの活用は、いまや経営者にとって重要なテーマ」と語るのはトライベック・ストラテジー取締役の後藤洋氏だ。その意味を解説してもらった。

生活者に訴求すべきは「モノ」ではなく「コト」

 「1990年代初頭のバブル崩壊後の〝失われた20年〟の中で日本は、経済成長のみならず、デジタルマーケティングの分野でも、欧米やアジアに大きく水をあけられました。特に日本企業におけるブランド価値失墜の痛手は大きい」と、トライベック・ストラテジー取締役の後藤洋氏は指摘する。

取締役COO 後藤 洋 氏

 後藤氏によると、その間、日本企業は旧態依然とした「モノづくり至上主義」にとどまり、そのモノを手にした生活者に「コト」を含めたブランド価値までは訴求することができなかったという。

 「日本企業には『いいモノをつくれば売れる』といった考えが根強い。確かに品質は重要ですが、『モノ』だけでなく『コト』を含めた体験価値そのものを伝える必要があります。日本企業の自社サイトは、カタログのようなものがほとんどでしょう。これでは『モノ』の価値も伝わりません。〝会社の顔〟としての『オウンドメディア』が企業価値を大きく左右するようになっています」。

 生活者を取り巻く環境が変化し、価値観も変わる中、企業はそれに乗り遅れていると言えそうだ。

 その課題解決につながる「オウンドメディア」について、どのように考えればよいのか。

 「企業と生活者とのコミュニケーションを考える場合、まず三つのメディアがあることに留意すべきです」。後藤氏によれば、それらは、テレビCMなど対価を支払う「ペイドメディア」、フェイスブックやツイッターなどの「アーンドメディア」、そして企業の自社サイトやブランドサイトなどの「オウンドメディア」を指し、トリプルメディアとも呼ばれるという。