欧米企業は早くから「オウンドメディア」に注力

 「トリプルメディアにはそれぞれ特性がありますが、そのうち『オウンドメディア』の最大の特長は、企業の公式サイトとして、信頼できる有益な情報を発信するメディアであることです」。

 インターネット上には情報が溢れ、生活者は情報過多、情報疲労に陥っている。こういう時代だからこそ「オウンドメディア」の存在価値が発揮されるわけだ。

 「欧米の企業は早い段階から『オウンドメディア』の活用に力を入れています。ハーレーダビッドソン、ルイ・ヴィトンなどは分かりやすい成功事例と言えます」。

 ハーレーダビッドソンのサイトを訪問すると、オートバイの車種やスペックではなく、「ハーレーに乗る楽しさ」が訴求されている。また、試乗の案内やオーナーの意見などのコンテンツも豊富だ。ルイ・ヴィトンのサイトも、あくまでも商品(モノ)ではなく「ルイ・ヴィトンを手に入れた世界観(コト)」が動画などを通じて体感できるようになっている。

「オウンドメディア」は
経営者が率先して取り組むべきテーマ

 日本企業がこうした海外企業に追い付くためにはどのような取り組みが必要なのか。

 「大切なのは、誰に何を伝えるかという点です。生活者が多様化しているからと言って、あまたの人に向けて情報を並べるだけでは、従来のカタログサイトから変わることができません。また、ここで注意すべきは、トレンドや最新の技術などを追いかけないことです。それよりも、生活者に伝えるべき『自社らしさ』とは何かを見極め、それを伝える『コンテンツ』を用意することが不可欠になります」。

 前述した「オウンドメディア」を活用する企業は、この「らしさ」の軸がぶれていないことが成功のポイントだという。

 「『らしさ』とは企業にとって『自分たちは何者か』と問うことに他なりません。つまり、企業理念にもつながるものです。日ごろ経営者が話している内容と、『オウンドメディア』が矛盾するようなことはあってはならないことです。こういった点からも、『オウンドメディア』を含めたメディア活用の在り方は、経営者のコミッションが不可欠でしょう」。

 海外の企業では、実際に経営資源を投入しているという。米国の企業ではボードメンバーとしてCMO(最高マーケティング責任者)を置く企業も増えている。

 トライベック・ストラテジーにおいても、「オウンドメディア」のコンサルティングをする場合には、最初に部署を横断したプロジェクトチームを立ち上げることが前提になるという。戦略の立案だけでも容易ではなく、責任の所在を明確にする必要もあるためだ。まさに経営者にとって重要なテーマということになる。

 「『オウンドメディア』は他のメディアと異なり、自社でコントロールできる生活者との貴重なコミュニケーションの〝架け橋?です。経営者が率先してかかわることにより、組織全体の意識を変えるとともに、『おもてなし』で知られる日本企業こそがグローバルのデジタルマーケティングをけん引する存在になれる」と後藤氏は確信している。

[制作/ダイヤモンド社 クロスメディア事業局]