貴金属のリーディングカンパニーとして、国内外に事業を展開している田中貴金属グループ。その中心となる持株会社TANAKAホールディングスでは、本格的なグローバル企業への変革を目指し、2011年からインドからのインターンシップ生を受け入れている。

毎年4人のインド人インターンシップ生を受け入れ

技術開発部で学習中のラビさん。日本語が不得手なIITの理系の学生も、社員たちとの積極的なコミュニケーションを通してインターンの間に日本語がかなり上達するという

 なぜインドからのインターンシップ生なのか? TANAKAホールディングスの人事総務部・人財開発室の松谷敦チーフマネージャーは、その理由をこう説明する。

「当グループでは、アジアや欧米に海外拠点を持ちますが、インドを含む南アジアが空白で、将来的にインドに駐在所を置く計画があります。インドは中東やアフリカへのビジネスの窓口としても重要で、インドの情報を得ること、インド人脈を構築する第一歩として、インドからのインターンシップ生の受け入れを開始したのです」

 もう一つの目的は、インドからのインターンシップ生を迎えることで、グループ社員に刺激を与えること。現在、米国や中国を中心に外国人社員を擁しているが、インド出身の社員はいない。これまでと違う文化圏の、違う価値観を持った人間との触れ合いを通して、グループ内に本格的なグローバル企業への意識変革を促す意味もあるという。

人事総務部で学習中のロハンさん。インターンシップを経験したインド人学生たちは、日本企業で働きたいという意思を持つケースも。「遅刻をしないなど、日本のビジネスルールにも意外と早く馴染みます」(松谷氏)

 受け入れの人数は、基本的に毎年4人(初年度は3人)。そのうち2人は、アイセック(AIESEC:124の国と地域で活動する世界最大級の学生組織、海外インターンシップ事業を運営する)を通して、日本語ができる文系のインド人学生を募集、他の2人はインド工科大学(IIT)から独自のルートで理系の学生を募集している。

 募集をかけたところ、初年度から反響が大きく、毎年両ルートを合わせて100人近い応募があるという。エッセイを中心とする書類審査や電話での面接を行って優秀な学生を選出、5月から7月まで約3ヵ月に渡り、日本国内でのインターンシップを実施している。

「インドでの日本のイメージは、アニメと漫画、そして“モノづくりの国”です。当グループの売上高の約7割は、自動車やモバイル機器、エネルギーや医療などの最先端領域で使われている産業用貴金属製品。ぜひ、当グループの製造の現場も体験してもらいたいと思い、“モノづくりの現場に携わりたい”という意欲を持つ学生を選んでいます」(松谷氏)