製造現場の学習から銀座ジュエリー店の店頭販売見学まで
インターンシップのスケジュールは、およそ次の通り。最初に本社で会社概要の説明とビジネスマナー等の研修を行い、必要に応じてサバイバル日本語の講習もする。その後、同社グループ内の各種の業務を体験していく。
田中電子工業の生産技術部や、田中貴金属工業の工場業務を学習する他、田中貴金属販売で海外売掛業務の学習や、田中貴金属ジュエリーの銀座本店で店頭販売見学、外国人顧客向けのマーケティングリサーチを行う。工場業務の学習では、実際にラインに入って、世界トップシェア製品であるボンディングワイヤの製造体験を行ったりもする。
また業務の空き時間にはインターンシップ生が若手社員への英会話レッスンを行ったり、年度によっては東京大学の先端技術センターを訪問、法政大学キャリアデザイン学部での講演を行うなど、かなり充実した日々を送る。
「インターンシップ生がわれわれに与えてくれる刺激の一つは、彼らのキャリアに対する向上心があります。まだ二十歳前後の学生ですが、将来の目標を明確に持っており、勉強や研究に対するモチベーションが非常に高い。若手の社員のみならず、大きな刺激を受けています」と松谷氏。
地方の工場や事業所などでは、昼食会や歓迎会などはもとより、グループ社員たちが自発的にインターンシップ生を地元の観光やスポーツやカラオケなどに誘い、異文化理解のコミュンケーションを積極的に取ろうとする姿勢が見られるという。
「受け入れのための事務作業は膨大で、けっこう大変なのですが、社内的な調整を含めて、人事総務部の担当者は、インターンシップの業務を通じて大きく成長します。グループ各社に“よろしく”で預けるものではなく、例えば食事のメニューに至るまで、細かく面倒を見なければならない。受け入れ環境をつくる準備も大変ですが、それを通して人事の担当者の成長も見られます。社内の人材育成の面からも、インドからのインターンシップ生の受け入れ効果は大きいものがあります」(松谷氏)
相互に刺激とメリットをもたらす海外インターンシップ
一方、インド人学生の一人は、インターンシップ修了後にこんな感想を残している。
「私はずっと日本でのインターンを望んでいました。私は仕事以外にも日本のワーキングスタイルを体験することができました。また、インターンを体験することで、自分の能力がどれほどのものなのかを理解することができました。何ができて、何ができないことなのかという発見は、自分にとってとても重要なことでした。インターンシップを体験することは、自分を振り返ることにつながり、そして自らの価値観をより豊かにする最も重要な経験の一つになります」
田中貴金属グループの社風は“大家族主義”で、ビジネスにおいては、何事にもコツコツと取り組み、真面目で正しいことを行うことを旨としている。異文化に所属するインドからの学生も、この社風に溶け込み、日本をさらに好きになって帰国していくという。
お互いに数々の刺激とメリットをもたらす、海外インターンシップ。TANAKAホールディングスでは、インドを含め、海外からのインターンシップ生の受け入れを、今後も引き続き継続していく考えだ。