築30年目をめどに具体的な
出口戦略を構築する

 このような悪循環が起こる元凶を、土屋氏は、「“出口戦略”がないから」だと指摘する。

「分譲時に25年先、35年先までの長期修繕計画が盛り込まれているマンションも多いのですが、その先をどうするかという指針は全く示されていません。一番難しい部分を、専門家でもない住民自身が考えなくてはいけなくなっているところが、全ての元凶なのです」

 理想をいえば、分譲時から、出口戦略を見据えた管理が行われるのが好ましい。それとは別に、今、実際に高経年マンションに住んでいる場合はどうしたらいいのだろう。

「遅くとも2回目の大規模修繕が終わった頃、築30年くらいで方針を検討し、具体的な出口戦略を構築することが重要です」

図2 60年プラン&90年プランの負担額試算(1戸当たり)
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 図2は、その一例として土屋氏が示した二つのプランだ。60年プランは、築30年時からあと30年、90年プランはあと60年住み続け、その後は建替え、または区分所有権を解消してマンションにピリオドを打つシナリオに向けた試案である。

 60年プランなら、ライフラインをキープするための修繕を、修繕積立金で賄っていく。90年プランなら、給排水管の全更新やコンクリートの中性化防止など、再生に必要な工事と、専有部分のスケルトンリフォームを築45~50年の間に大規模修繕工事と一緒に実施する。

「つまり、3回目の大規模修繕工事を、1、2回目と同じようなつもりでやってしまっては駄目なのです。建物をぎりぎりまで使うのか、再生するのか。ここで方針を決めないと、後では動けなくなってしまいます」

 上の例で費用の負担額を見てみると、専有部分80平方㍍当たり、60年プランでは総額763万円、90年プランでは総額2806万円となる。右上に機械式駐車場がある場合の費用を書き添えたのは、維持コストが高い機械式駐車場がお荷物となっているケースが多いからだ。

 このように具体的な数字が出てくれば、自分たちのマンションで、何が可能で何が不可能なのかが見えてくる。

 もちろん、このプランはあくまで目安で、必ず60年か90年かを選ばなくてはいけないわけではない。築30年くらいのときに、専門家に建物診断と試算を依頼し(50戸くらいのマンションで、費用は約200万円だという)、自分たちのマンションの実情に応じた、オリジナルのプランを策定すればいい。重要なのは、建物と住民双方の実態を把握し、出口戦略の具体的な検討に取り掛かることである。

(続きは、ダイヤモンドMOOK『あなたのマンションが生まれ変わる!2015』でご覧ください)

 

この記事が収録されている「ダイヤモンドMOOK」2014年10月26日号『あなたのマンションが生まれ変わる! 2015』の詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

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