分散する重要データを常に把握する

 データの活用については、CxOと呼ばれる経営層だけでなく、マーケティングやセールスの現場にも課題がありそうだ。たとえば、毎日のように表計算ソフトでつくった分厚いレポートの束と格闘している光景を見かけるが、決してこれを使いこなしているとは言えないだろう。

 水嶋氏は「全てのデータをいつも見ている必要はありません。常に必要な情報は売り上げ、利益、キャッシュポジションのような主要な結果指標と、(例えば小売りであれば)来店者数、客単価、売掛金と買掛金などの先行指標、そしてそれぞれの増減、対前月比、対前年比くらいで良いのではないでしょうか。他のデータは主要指標に異変が起きたときの原因究明、何らかのアクションを起こすときの検討材料に使うべきです。また、必要に応じてすぐに使えるように一カ所でアクセスできるように整えておくことも重要です」と話す。

 〝データの一元管理〟や〝見える化〟などを旗印に掲げる製品はすでに存在する。BIツールなどと呼ばれることもある。水嶋氏の指摘は、これらとどう異なるのか。

 「ERPやCRMなどのアプリケーションからデータを集めてきてデータウェアハウスに統合するだけではビジネスインパクトは期待できません。事業にとって重要なデータであれば、それが社内にあろうと社外にあろうと、経営者の視点に合わせて有機的に統合できることが重要。当社の『Domo』なら、それが容易に実現します」。

 そう水嶋氏が語るように、「Domo」はこれまでに例のない、新しい概念の経営管理プラットフォームとなっている。最大の特長は、複数の企業が提供しているさまざまなソリューションをAPIで接続できることだ。具体的には、表計算ソフト、データベース、ERPやCRMなどから必要なデータだけを抽出し、ダッシュボードに見やすく表示できる。さらに、自社所有のデータのみならず、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアのデータ、第三者から購入したリサーチデータ、統計情報のような公開データの統合も可能だというから頼もしい。

 従来、このようなデータ活用を行うには、一定規模のデータウェアハウスやサーバーなどが必要だった。ただし、それにもかかわらず、データの分析や抽出に時間がかかったり、KPIの変更もなかなかできなかったりといった課題もあった。

 「Domo」なら、前述したように、さまざまなデータソースとAPIで接続されているため、リアルタイムでデータを参照できる。また、ダッシュボードをユーザー自身で簡単にカスタマイズすることもできる。「新たなKPIの作成も、慣れれば数分でできます」(水嶋氏)というから驚く。

欧米で約600社が採用
日本でも導入企業が増加

 Domoは2010年に米国で設立された。実は、同社CEOのジャシュ・ジェイムズ氏は、Webサイト分析ソリューションとして高いシェアを誇る「SiteCatalyst(サイトカタリスト)」を生み出したOmniture(オムニチュア)社を創業した人物である(09年にアドビ社に売却)。Domoが誕生したきっかけは、ジェイムズ氏がオムニチュア社のCEO時代、経営に必要なデータがリアルタイムで入手できず苦労した経験にあるという。Domoの使い勝手が良いのもそこに理由があるのだろう。

 クラウドで提供していることから、初期投資を抑えて導入できるとともに、常に最新のアップデートやサポートが受けられるのも特長であり、わずかな期間でDomoのユーザー数は急速に伸びている。世界最大級のeコマースであるeBay社をはじめ、全世界ですでに600社以上に採用されている他、日本でも、楽天など有名企業で導入例が増えている。

 「Domoを活用することで、具体的なアクションを促す生きたデータを誰でも簡単に閲覧することができるようになります。日本企業の競争力向上にも貢献したいと願っています」(水嶋氏)。

[制作/ダイヤモンド社 クロスメディア事業局]