練習していないから
打ち分けができない

 ゴルフ雑誌によくある「58度で60ヤード打つには、バックスイングは9時」みたいに、1本のクラブで5ヤード、10ヤード単位で打ち分けるよりも、それぞれのクラブで「フルショット」「スリークオーター」「ハーフショット」の方が分かりやすいし、やさしいですよ。

 藤田選手は、7番アイアンのハーフショットで100ヤードを打つ練習を年中やってるわけですよ。だから、林の中から100ヤード先のフェアウェイの幅を狙って出せる。アマチュアは、木に当てないで100ヤードを低く出すときに、木に当てないことしか考えないから、5番アイアンだ4番アイアンだってなるんだけど、そうすると、フェアウェイを飛び越えて向こうのラフに入っちゃったり。練習してないから、力加減が分からないんだよね。

 ゴルフは、頭の中に入ってる各ショットのバリエーションの引き出しが、多ければ多いほどいいんですよ。アマチュアは、雑誌を開くとレッスンを見るでしょ。縦振りだとか横振りだとか、パソコンでいえばハードの部分、中のマザーボードに当たるスイングを取り換えようとするじゃない。そうじゃなくて、今あるものの中で、引き出しを多くしていくってことが大事なんです。

ゴルフは飛ばしではなく
狙った距離を打つゲーム

 スイングなんか関係ないんだよね。いつも言うんだけど、
100ヤード前に飛んだら絶対100切れるんですよ。だって、100ヤードを100回打ったら1万ヤードだから、余裕でコースのヤーデージを上回るでしょ。

 ゴルフって、狙った距離を打つゲームなんです。それをプロは分かってるから、ショートゲームが練習のメインになる。面白いのは、14本あるクラブの中で唯一、狙った距離を打つんじゃなくて、思い切り振ったときに何ヤード飛ぶか分からないっていうのがドライバー。だからそれだけ不確実なものをいくら練習したって、「下手な鉄砲、数打っても当たらない」で終わるんですよ。

 一番難しいのは、2本のクラブの間の、中途半端な距離が残ったとき。「ビトウィナー」っていうんだけど、そこを埋めるのがハーフショットやスリークオーターでの打ち分け。プロは、ビトウィナーの処理能力をいかに高めるかを考えてることがよく分かりましたね。

 自分の得意な距離に残そうとしても実際、残せないでしょ。フルショットの100ヤードを残そうとしたのが、90ヤードになっちゃった。そこで、中途半端な距離の処理能力があるかどうかが問われるんです。

 アマチュアの方にとっても、スイング理論やドライバーよりも、ショートゲームの引き出しを増やすことが、より実戦につながる練習になりますよ。