厳しい業務の中でも「女性らしい視点」を

 業務の内容は少しずつ変化しているという。従来は、雑誌・新聞や菓子、飲料など商品別に運行車が分かれ、1駅に2、3両のトラックが納品していた。しかし、配送の合理化によって商品の混載が進み、現在では1両のトラックに荷物が集約されて運ばれる。「1駅に届ける荷量が増え、仕事はきつくなっている」との実感はある。

 最も荷物が多いのは、一般雑貨の納品がない日曜日を経た、月曜日。「週の初めからふらふらになる」。仕事が終わっても買い出しや食事の支度、洗濯など家事が待っており、朝はまた、家族のお弁当を作って家を出る。配送の仕事も止まることはなく、真夏には汗だくになり、大雨の日には自分がびしょ濡れになりながらも、商品だけは汚さないよう店舗に着実に届ける。今年2月の大雪では道路渋滞に巻き込まれ、24時間車の中にいた。

 手積み手卸しが中心で力仕事も多く、ドライバー応募者には実際の仕事内容を知って採用を辞退する人もいるという。女性にとって厳しい業務内容ではあるが「今の仕事は楽しい」と川沼さんはきっぱり。「たくさんの人と色々な話ができ、仲間も皆いい人ばかり」。配送中には駅の利用客から、『女の人なのに、がんばってね』と励まされることも。「うれしいです。『がんばらなくては』という気分になりますね」そう顔をほころばせる。

 仕事の中では、女性ならではの気遣いも欠かさない。雨天の配送時には店舗床を濡らしてしまった雨水を拭い、店を汚さないように配慮。キオスクでは店員の靴を揃えておいたりもする。売店スタッフとのコミュニケーションも弾む。勤務当初は「女性だしすぐに辞めてしまうんでしょう」と言われていたが、最近はしばらく配送に行かないと「どうしていたかと思ったわ」と声を掛けられるという。こうした会話の中で寄せられた要望は社内に持ち帰って改善に繋げている。

 今後の目標を聞くと、「無事故表彰の金賞かな」と照れ笑い。JR東日本物流では無事故表彰制度を設置しており、既に銀賞、銅賞は受賞済み。金賞は約2500日連続の無事故で表彰される。「駅構内での配送はもちろん、トラック運転中も事故を起こさないことを何より第一に考えている。これからも無事故で業務にあたりたい」と仕事へのさらなる意欲を語る。

(取材・文/『カーゴニュース』記者 大澤瑛美子)