オフィス移転を機に、大胆にオフィスを変え、それに合わせて働き方の変革に着手する企業が増えてきた。なぜ、オフィスを変えることが重要なのか。オフィスによって企業は何が変わるのか?オフィス構築を手掛ける富士ビジネスの河田誠一郎社長に聞いた。
ワークスタイルの変革がもたらす
オフィスの変化
―― これまで日本企業に多く見られたオフィスは、四角四面のビルのフロアに、四角い机を向い合せに並べて島を作り、その島を見渡す位置に管理職が座る、というものでした。この形がずいぶん変わってきているようです。
河田 顕著な例は、最近増えてきている「フリーアドレス制」を導入しているオフィスですね。基本的には固定席を設けず、その日の気分で席を自由に選ぶというスタイルです。
固定席がないこの働き方を導入しているオフィスは、開放的なフロアの中心に広い会議スペースを設けていたり、少人数用のミーティングスペースや集中したい人向けの個人ブースを作るなど、多様な業務に応じた多様なレイアウトになっているのが特徴で、四角四面のオフィス風景とはまるで別物です。
ICT(情報通信技術)の進歩で、固定電話のある固定の席で仕事をする必然性はなくなりました。外出先でも移動中でも、あるいは自宅でも情報にアクセスが可能で、会社にいるのとほとんど変わらないレベルで仕事ができます。こうしたワークスタイルが増えてきたために、固定席のオフィスが最適ではなくなったということでしょう。
オフィスに変化がみられるのは、従来の働き方、ワークスタイルに変化が起き、それに伴って新たなオフィスの形が生まれてきている、ということだと思います。
―― フリーアドレス制に続き、最近では新たに「テレワーク」という働き方が注目されています。テレワークとは、定時の概念にとらわれず、ICTを活用し、必要に応じて週2、3回出社するという働き方ですが、これらの新しいワークスタイルではオフィス滞在時間が減少する方向にあります。働き方の変化の先には、オフィスが不要になることもあり得る、ということでしょうか?
河田 その発想は全く逆だと思います。
テレワークでも、週に数日はオフィスに行くことが必要になるでしょう。そのときに「会社に行きたいな」「あそこに行くと何かアイディアが生まれるかもしれない」とワーカー(従業員)に思わせる"引力のある"オフィスにすることが非常に大切です。
テレワークによって、オフィスは従来のような単に働く場所としての存在ではなく、活発にコミュニケーションを取ったり、直接顔を合せないと進められない業務が行える特別な場所として、今よりも多くの、違った役割を果たすものに変化していくのではないでしょうか。オフィスの存在意義、存在価値はむしろ高まっていくと思います。
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