アベノミクス効果を地方にも波及させ、人口減少の歯止めや地域経済の活性化を目指す「ローカル・アベノミクス」が動きだした。製造業の投資意欲に回復の兆しが見られる今、政府の各種施策を活用し、企業ニーズに合った誘致を進める地域に企業は注目する。
(日本立地センター専務理事 德増秀博)

 

 東京圏への一極集中が続く中で、地方では人口減少や高齢化などの課題に直面している。政府では、そうした構造的な課題に対し、「地方創生」をスローガンに、地方の活性化と人口減少対策のための「長期ビジョン」および「総合戦略」を策定し閣議決定した。魅力ある町づくり、人づくり、仕事づくりを推進することで地方が成長する活力を取り戻し、人口減少を食い止めるのが狙いだ。

 総合戦略の一つである「仕事づくり」では、「地域産業の競争力強化」「地域サービス産業の活性化」「特産品・資源の活用」「新たなビジネスの創出」「ひとの育成・確保」の五つを柱とした支援策がまとめられている。

 例えば「地域産業の競争力強化」では、企業の新分野進出や新製品開発、販路拡大、技術シーズの事業化などに対し、専門家の派遣や研究機関との共同研究、交付金・補助金などによる支援を行う。また、地方の本社機能の強化や、東京からの本社機能の移転に伴うオフィスの新増設、新規雇用に対しては、税制優遇措置を適用するなど実践的な支援策となっている。

次世代自動車に期待大
航空機は新規投資進む

  国内産業の動きを見ていこう。大手企業を中心に設備投資の軸足が海外へ移行する中、国内では製造業の投資意欲が持ち直し、明るい兆しが見られる。

 しかし、近年はマザー工場としての拠点整備や付加価値化など国内生産拠点の役割が変化しており、例えば半導体分野では工場閉鎖・再編が進み、高度製品生産工場へと変わっている。

 また、自動車産業は各社とも海外生産を選択し、国内ではハイブリッド車や電気自動車、燃料電池自動車など次世代自動車の研究開発・生産を目指す投資に移っている。こうした次世代自動車の普及に伴い、車載用リチウムイオン電池市場は急成長すると見込まれており、民生用もスマートフォン・パソコン・タブレット型端末機の増加により市場の成長が予想されている。

 リチウムイオン電池の主要部材は、海外企業の進出が見られるが、電解液や極材などの素材と装置は日本企業が技術的に優位に立っており、今後も日本の強みとして発展が期待される。

 一方、航空機産業は、米ボーイングの「B787」の増産や三菱リージョナルジェットの受注生産開始に伴い、各地で新規投資や生産能力増強が図られているほか、新たにエンジン工場の増設の動きも見られる。

 内需型産業としては、医薬・医療機器分野の生産額が伸びており、医薬品の研究開発拠点の展開や、医療機器、介護用品、健康食品などの分野で、関連企業や新規参入の動きが活発だ。また、食品産業も高齢者向け食品や介護・病院食などに対応した工場再編が進んでいる。