2014年にCFO Research社が実施したグローバル企業の上級財務担当者を対象にしたアンケート調査で、事業部門の意思決定者が的確な意思決定を行うためには「財務部門には、『業務指標と財務効果を統合した洞察』と『将来を見通す予測データの適時適切な抽出』が必要」――という回答が多く寄せられた。これは、財務部門に求められる役割が「財務数値の”管理人”」から「財務数値に基づく”事業推進の司令塔”」へと変化したことを、CFO自身が強く認識していることの証左であろう。しかし、その実現は容易ではない。ERPなどの業務アプリケーションを開発する世界有数のITベンダーであり、自らもM&Aやグローバル展開を行う過程で、次世代の会計基盤導入に成功した実績を持つSAPを例にそのヒントを探る。
浮き彫りになる財務部門の課題
国際財務報告基準(IFRS)への対応も急務に
先のCFO Research社の調査では、対象となったCFOのほぼ全員が「意欲的な目標を達成するには、自社の情報システムのアップグレードが必要」だと回答し、半数近く(47%)が「ITへの投資は、翌年の最優先事項の1つ」に掲げている。また、多くのCFOは、業務部門が情報活用で失敗しないために、「『数字の背後にある意味を明らかにし』『イノベーションやビジネス変革を促す真の要因を突き止める』ことで業務部門をサポートする必要がある」と考えており、様々な財務データを分析し、その結果を財務戦略に反映する必要性を感じていることが今回の調査で浮き彫りとなった。
だが、課題は多い。従来の財務オペレーションに関わるシステムやアプリケーションは、そのほとんどが技術的に分離したものであり、情報の重複やデータのサイロ化をもたらしていた。それらの情報を個別に利活用する場合は問題ないが、数値の突き合わせや分断されたデータのつなぎ合わせが大きな障害となり、拠点のグローバル化などによって複雑で高度化した企業の財務状況を把握することは困難だ。
別の課題もある。株主や債権者など、外部の利害関係者に開示することが目的の財務会計と、経営者や企業内部の管理者への情報提供を目的とした管理会計は、内容や分析視点が異なることから一元管理が難しい。日本企業は長くこの難題に取り組んできたが、国際財務報告基準(IFRS)ではその二つを区別しておらず、導入に向けた動きが活発化する日本企業でも一元管理は必須だろう。(さらに詳しい情報を知りたい方は、下記より資料をダウンロード下さい)