鮮魚売り場のように
予約時刻で料金が変化

 さらに宿泊料金の変動も激しくなっている。といってもユーザーにとってメリットのある料金の値下げではない。

「大半のホテルチェーンでは需要に合わせて料金を変更するレベニューマネジメント(RM)を精力的に行っていて、同じ部屋に3000円台で泊まれる日もあれば3万円の日もある。また満室が見込まれる日は料金を高く表示し、売れ残りが予測されるようになると下げることもあり、まるでスーパーの鮮魚売り場のようです」(近藤氏)

 ビジネスホテルを名乗りながら高い料金が取れる旅行客を視野に入れていることから起こる現象だが、ビジネスパーソンの出張の多くは急に決まるものだから何ヵ月も前の予約は不可能だし、会社に請求できる金額にも上限がある。「CRM(顧客満足度を向上させる取り組み)を導入するホテルチェーンでは、常連会員向けにはほぼ一定の料金で提供しているところも。また接客の質の向上も図っています。そのあたりの見極めが重要ですね」と近藤氏は定宿選びのポイントをアドバイスする。

 先の調査では予約の主流はネットで、7割以上が宿泊予約サイト(OTA)から予約しており、ホテルの公式HPから予約した人は1割強にすぎないことが分かった。

「しかしホテル側はOTAからの申し込みでは手数料が掛かるので、自社の公式HP経由の予約に力を入れています。ベストレートギャランティ(最低価格保証)をしたり、満室に近づいたらOTAを売り止めにして販売を公式HPに絞ることもあります」(近藤氏)

 OTA予約には共通ポイントがたまるなどメリットも多いが、公式HPをチェックすることも上手にビジネスホテルを利用するコツといえるだろう。

 競争が激化しているおかげでビジネスホテル全体の質は高い。そこで複数のホテルを試してみて、自分に合うホテルを決めて常連になる。それが出張を快適にする賢い利用法だ。

限りなく高級な?
カプセルホテルも出現

 東京都心部には、インバウンドを狙うビジネスホテルに対抗する強敵が続々と出現している。
「インフラとしての宿泊施設が成熟化したことにより、プレミアクラスのビジネスホテルの続出という上振れだけでなく、ビジネスホテルより廉価なグレードである簡易宿泊所の多様化という現象も起きています」と近藤氏。
 それはつまり、1979年に登場した、日本発祥の宿泊施設といわれるカプセルホテルの高級化である。
 飛行機のファーストクラスをイメージしたキャビンを提供するものや、アニメの聖地秋葉原で寝台列車をイメージした2段ベッドを提供するものなどで、料金はビジネスホテルの半分から8割程度だ。