セキュリティ面で多くの課題
新しいテクノロジーが出てきた時に、同時に浮かび上がるのが法制度の問題だ。IoTが真のイノベーションとなるためにも、プライバシーやセキュリティなどの面でクリアするべき課題は多い。
「19世紀に自動車が世に出てくるまでは道路交通法が整備されていなかったのと同じで、IoTに関する法整備もまだ不十分なところがあります。今後、各国で法律の枠組みが定まっていくことでしょう。国によってアプローチは違いますが、日本では個人情報保護法を改正しようという動きが進んでいます。インターネットはこれまでにないテクノロジーだけに、影の部分もあります。経済発展につなげるためのアクセルを踏みつつ、安全性を高めるためのブレーキにも常に気を配る。このバランスが大事。IoT推進委員会においても法律の専門家と一緒に新しい枠組みの作成について議論しているところです」
今年開かれるInterop Tokyo 2015では、IoT関連の基調講演や展示も多く見られるが、さらに併設イベントとして「IoT World」が開催される。これらの展示・講演のなかでも、技術標準化、相互運用性の確保ともにセキュリティについて採り上げられる機会が多くなりそうだ。
2020年に向けて
通信環境の整備が急務
これだけ注目が高まっているものの、日本企業のIoTに対する関心はまだまだ低いと藤原氏は漏らす。
「たとえばアメリカやEUで、IoTに関する情報セキュリティ基準の策定が進んでいますが、その基準を満たさない日本製品がEUで販売できなくなってしまうといったことが起こりえます。世界の動きに乗り遅れないためにも、IoTについてもっと関心を高く持つ必要があるでしょう」
IoT推進にはWi-Fi環境の充実が欠かせないが、日本はWi-Fi環境の整備で諸外国に大きな後れを取っているという問題がある。2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて訪日観光客の増加が予想されるなか、Wi-Fi環境の整備を急ピッチで進める必要があるだろう。
Wi-Fiの整備が進めば、IoTの活用の幅も広がる。たとえば個人が持つデバイスから位置情報を収集し、それを活用してきめ細やかなマーケティング活動を行うといったことが可能になる。鉄道会社や小売店、飲食店などのローカル企業や、広告会社にとっては、これまでにない新しいサービスを創出する切り口になるのではないだろうか。
藤原氏はイベントについての期待をこう語ってくれた。
「インターネットにつながっているデバイスの数は、すでにインターネットにつながっている人間の数を遙かに超えています。IoTはもはや"バズワード"ではなく"キーワード"になっているのです。インターネットがこれからどうなっていくのか、ぜひInteropで確認してください」
(取材・文/ダイヤモンド・オンラインIT&ビジネス、撮影/宇佐見利明)
※2015年4月27日取材