グローバル規模での
適材適所を実現
さらに同社にはベネフィットの専門家もいる。堀之内俊也氏はその一人だ。
「買収した企業から事業部門を切り出して再編するカーブアウトのような事例も最近は多くなってきています。このような場合、退職給付や医療保険に関する給付債務やカーブアウトに伴う制度運営費用の増加が後から出てきて、新会社の利益の圧迫要因になることもあります。DDの段階でそれが将来のキャッシュフローに与える影響を把握し、過去勤務期間にかかる債務の最適な“切り出し方”や外部ベンダーへの委託方法に至るまでを見通して課題を提起できるかどうかが、PMIの成否を左右するのです」
一方で同社は、グローバルレベルでの人材マネジメントの支援や、そのための基盤やツールの導入支援などにも力を入れている。話すのは、組織人事部門の中村健太郎氏だ。
「グローバル化の時代では、買収した企業の人材を含む世界中のタレントプールから優秀な人材を登用することが求められてきています。そのためにはどこにどういう人材がいるのかを把握するための人材データベースであったり、共通した基準による評価やグレーディングなどの基盤の整備が必要となります。このようなグローバル規模での適材適所を実現するための基盤やツールの導入支援も行っています」
巨額の投資をしてM&Aを行っても、シナジーが一向に出ずに悩んでいる企業は多い。DDに問題があったのか、PMIが不十分だったのか、いずれにせよどこかに瑕疵があったはず。タワーズワトソンは、クローズして数年を経たそういう案件の支援もする。実際、最近はそういう需要が増えているという。
M&Aを成功させるカギを握っているのは、間違いなくDDとPMIだ。だが、DDとPMIを一貫した流れとして捉え、実施できるファームは多くない。
投資家の目が厳しくなっている今、M&Aはしたけれど……という言い訳は通用しない。だからこそ、本当に力のあるパートナーを選び出すことが、何よりも重要なのではないだろうか。