「造船所は人口の少ない地域に存在し、そもそも3GやLTE回線がつながりづらく、鉄の塊など大型部品もあって、ネットワークを支える電波が届きにくくICT導入が遅れがちです。解決策として、広範囲に無線を飛ばせる広域連続Wi-Fiアクセスポイントの企画・開発を取引先メーカーに提案しました。

 これがあれば、広い造船所のどこででもネットへの接続が可能になります。通信インフラが整うことで、監視カメラによる現場状況や安全の確認、センサーによる故障通知といったICTの機能がフルに活用できるようになります」(大内社長)

dock造船所への広域Wi-Fiネットワーク導入によるIoTの活用イメージ
拡大画像表示

 多くの製鉄所も事情は同じだ。特に、ICTを活用した現場作業担当者の安全対策強化には、事故が起こった場合の補償費用の削減といった観点からも、広域連続Wi-Fiネットワークに関心を示す企業が多いという。

 ICTの活用には、通信インフラの他、監視カメラやセンサー、作業担当者が情報収集に使うタブレット端末、それに付随するシステムの導入など一貫したソリューションが必要だが、同社はこれらを全て提供できる。

実用的なソリューションで
IoTをもっと身近に

 製造業に限らず、幅広い業種のあらゆるIoT活用ニーズに対応するため、他社との資本や業務提携などを通じ、新しい技術を積極的に取り入れているのも菱洋エレクトロの特徴だ。

 今年3月には、スマートフォンやタブレットによる電子マネー決済システム開発のTFペイメントサービスと資本・業務面での提携を実施した。同社は、1台のカードリーダーで複数種類の電子マネー情報の読み取りが可能なシステムを提供している。複数のリーダーを組み込んだ従来製品に比べ、導入コストが大幅に低減できるという。

 また5月には、MVNO(仮想移動体通信事業者)のアイストリームと資本・業務提携を行い、今後、同社のクラウドサービスを利用した従量課金制の通信サービスを検討している。

 IoTが普及していくと、3GやLTE回線を介して機械と機械、機械と人がつながる機会が確実に増えることをにらみ、固定料金制では通信費が割高になってしまう企業のために“使った分だけ支払う”料金体系を提供するというものだ。

「機械に搭載されたセンサーなどの1回当たりの通信量は非常に小さいので、従量課金制の方がコストが格段に安くなる可能性があります。こうしたソリューションを積極的に提案することで、日本でのIoT普及を後押しすることができれば幸いです」と大内社長は語る。

 日本は、IoTの普及では欧米に大きく遅れを取っているといわれる。菱洋エレクトロは、顧客が現在使用している環境ですぐに導入が可能なソリューションを提案し、IoTをもっと身近なものにしていきたいと考えている。