4.預託金の返却

 預託金は、ビザを取り消せば全額が戻ってくる。所定の書類と振込銀行を指定すれば、申請から1~1カ月半程度で手続きは完了する。

 DBPに預託金が預け入れられている場合、PRAが指定口座に直接振り込むが、他の銀行にある場合はWithdrawal Clearance(引き出し許可証)をPRAから受け取り、本人が直接、預託金を預けてある銀行に赴いて送金手続きしなければならない。ちなみに送金先の銀行は日本ないし国外の本人名義の口座でなければならない。

 この手続きで最近ネックとなっているのがインタビューだ。申請に先立ってPRAのインタビューを受けなければならない。インタビューの内容はどうってことはないのだが、日本にいる場合は、そのためだけにフィリピンに来なければならない。さらに取消手続きにはパスポート元本を預ける必要があるので、帰国してからパスポートをPRAに送り、手続き完了後、パスポートを送り返してもらって、銀行手続きに再度訪問するなど、合わせて3カ月近い期間が必要となる(ただし旧パスポートにビザのシールがある場合は、旧パスポートのみでOKなので、パスポートの送付の手間がないだけ時間が節約できる)。

 なお、入院などの理由で面接のためにフィリピンを訪問できない事情がある場合は、医師の診断書などを提出すれば面接が免除され、現地の人間に手続きを代行させることができる。この場合、委任状などの書類は日本で公証し、フィリピン大使館で認証する必要があり、書類準備がかなり面倒だ。

5.預託金の相続

 申請者が亡くなったら、家族がビザキャンセルの手続きをして預託金を引き出すことになる。ただしこの引出しは相続手続きとなり、気の遠くなるような手間と時間がかかる。とくに遺産分割協議書(Extrajudicial Settlement)の作成は、遺族構成が複雑な場合、厄介だ。

参考:フィリピン在住の退職者が死んでしまったら、どのような手続きが必要なのか

 従来、ORアカウントの取り扱いは、名義人の一方が亡くなった場合、単独名義の相続と同じ手続きが必要とされていた。しかしながら、最近取り扱っている相続の件では、銀行からの書類に「ORアカウントの場合、遺産分割協議書が不要」と明記されていた。

 この銀行はBDO(Banco de Oro)で、さらに確認したところ、約款にも「ORアカウントについては他の相続人の同意なしで全額が一方の名義人のものになる」と記されていた。もっとも「税務署(BIR)発効のCAR(証明書)が必要」とあるので、預託金の半分は相続税の対象となる恐れがある。

 実際の相続手続きはこれからなので詳細は不明だが、ORアカウントでは面倒な相続手続きなしに、PRAからWithdrawal Clearanceを入手し、相続税を支払えば、口座の残額を引き出すことができそうだ。

 気になるのはDBPへ預けた預金の取り扱いだが、DBPの場合、口座名義人はPRAであり、ORアカウントの相続の扱いはPRA次第だ。PRAの財務部門のトップ、フィリップ部長と、民間銀行におけるORアカウントの最近の取り扱いと、DBPの預金をORアカウントに変更できない不公平について話し合いを持った。フィリップ部長は当方の主旨を汲んでくれて、ORアカウントならびに相続における取り扱いについて有効な手だてを講じると約束してくれた。

 ORアカウントの有効性が確認できたら、SRRVを保有する退職者には大いにORアカウントを勧めたい。ただし現状、夫婦でSRRVを保有しているか、フィリピン人配偶者を有している場合に限定される。

(文/志賀和民)

著者紹介:志賀和民(しが・かずたみ)
東京出身。東北大学大学院修了後、日揮(株)入社。シンガポールをかわきりに海外勤務を歴任。1989年日揮関連会社社長に就任しフィリピンに移住。2007年4月PASCO(サロン・デ・パスコ)取締役。

 

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