転職時にシビアに分かる
“英語力格差”
では具体的に、英語力があるとないとでは、どの程度の差ができてしまうのだろうか。
小倉社長は、あるケースを紹介する。例えばM&Aの経験を5年ほど持つ、33~35歳のビジネスパーソンの場合。ビジネススキルや年齢が全く同じでも、英語力の有無によって、選択肢や年収に絶対的な“格差”が出てしまうという。
「英語力が上級レベルである場合、外資系の投資銀行や、日系大手証券会社の投資銀行部門のクロスボーダーのチームに呼ばれる可能性が十分にあります。その場合、年収で1200万~1500万円は提示してもらえます。これに賞与が加わるので、仕上がりで1500万~3000万円近くなる。一方で英語力がない人の場合、選択肢はかなり狭くなります。紹介できるのは、国内の証券会社の投資銀行部門で、国内の案件のみを扱うポジションに限定されます。そこで提示されるのは、600万~900万円程度。賞与が付いても1200万~1300万円くらい。実感として最低でも2~3割は違うと思います」
さらに、プロフェッショナルファームで海外のM&A案件の経験を積めば、次のステージとして、国内大手企業の経営企画部門に転職できる可能性もある。海外進出を図る事業会社は、いずれも英語力のあるM&A経験者を求めているからである。
アジアの優秀な人材との
競争が始まっている
英語力の向上は、キャリアアップを図るためだけではない。生き残りにも必要なのだ。すでに、転職業界ではアジアの優秀な人材との競争が始まっているという。
「日本国内でマーケットが完結していたのは昔の話。中堅企業でもマーケットは海外に求めていかなければならない時代に、英語を話せません、と悠長に言っている場合ではありません。例えばアジアの優秀な人材は、英語はもちろん、日本語もしゃべれて、母国語はネイティブ。この時点で日本人よりも相当に有利です。今後私たちは、そういう人たちと競争していかないといけないのです」と小倉社長は危機感を促す。
今では多くの一般企業が、社内で英語研修をしたり、英会話スクールと契約して社員に通学を促したり、TOEIC®の講習や受験に補助金を出すなど、英語力向上に力を入れている。留学経験がなくても、英語力を高めて海外担当部署などに配属されることで、ビジネスで英語を使う環境に身を置くことは可能だ。
「転職が、特別なことではない今、この業界での動きは一般的なビジネスシーンに置き換えが可能です。キャリアアップを図るためには、英語力は必須と言い切ってもいい」と語る小倉社長。英語を使えるのが前提のビジネス社会は、すでに到来しているのだ。