東京都心を移動していると、どのエリアにも住友不動産が管理するビルが数多くあることに気が付く。その多様性と耐震をはじめとする最先端のBCP対応で、同社のオフィスビルへの信頼度は高い。
取締役
大手不動産会社の中でも住友不動産が展開するビルは、東京都内主要エリア各所において集中展開しているのが特徴で「都心で運営・管理する200棟を超えるオフィスビルの87%は都心7区にあります」と加藤宏史取締役は語る。規模も6万坪クラスの大規模ビルから中規模ビルまで多種多様にそろえ、「言うなれば“オフィスビルの百貨店”、テナントのニーズに合った空間を提供することができます」。
会社の成長に合わせて近隣にオフィスを拡張したり、営業部門はクライアントに近い都心部、システム部門は賃料の安いエリアというように分離させてコストを抑えたりといったことが、住友不動産であれば自在にできるということだ。
顧客の安心・安全に
資する免震構造を採用
東日本大震災以降、企業が最も高い関心を寄せているBCP(事業継続計画)支援体制。住友不動産では「地震に対する対応はどのビルでも必須条件」(加藤氏)だが、最新ビルでは、より高い安全性を目指している。
今年4月に竣工した、高さ180メートル、地上35階の「東京日本橋タワー」は、日本橋地区初の同社フラッグシップビルとして中間免震構造を採用している。5階までは制振構造として制振部材が地震動のエネルギーを吸収。6階以上は、6階床下に配置した免震層により建物重量を支える主架構の損傷を抑え、オフィス内の什器の転倒による二次被害を防止する。
現在建設が進んでいる六本木三丁目東地区プロジェクトでは、高さ約230メートル、地上43階のオフィス棟が建つが、28階までを制振構造とし、29階のスカイロビー下部に免震層を設けている。この構造によって高層部を下部の揺れと絶縁に近い状態にして揺れを抑える。
「かつては、高さ100メートル級のビルは免震構造、200メートル級は高度な制振構造の採用を基本としていましたが、震災以降、よりBCP対応を重視するようになった企業からは、建物が安全というレベル以上の安寧を求められるようになった」と加藤氏は振り返る。そこで100年安心な建物を前提に、どういう設計であれば180メートル級のビルに免震構造を採用できるのか、設計会社と共に徹底的に議論して免震+制振のハイブリッド構造を実現した。「建設コストは高くなりますが、テナントが得られる安心感には代えられません」。
また、先の大震災では、都心のビルでも揺れを感知して自動停止したエレベーターに閉じ込められた人が多く出たが、東京日本橋タワーでは震度5強程度までの揺れであれば自動仮復旧する設計のため、テナントの安心感は相当高いだろう。