日本そして首都東京は、人口減少や少子高齢化に直面する中、極めて厳しい国際競争にさらされており、将来に向け、経済・社会を持続・発展できるかどうかの大きな岐路に立たされている。東京は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを一つの契機に、「国際競争力のある世界有数の都市」として、生まれ変わることができるのか。最大の鍵は、その玄関口である「羽田空港」が握っている。飛行経路の見直しを含め、国際線増便の背景や、取り組むべき課題について識者の意見を聴いた。
羽田空港には、現在4本の滑走路と3ヵ所の旅客ターミナル(国内2、国際1)がある。都心からの距離はわずか15キロメートルとアクセスも良く、地方と首都圏、そして世界をつなぐ役割を果たしている。その羽田空港で今、国際線の増便が検討されている。それはどうしてなのか?
作家/航空ジャーナリスト
都市経済・文化の発展の背景には、常に人の活発な往来がある。将来の経済・文化発展を考える上では、「諸外国との結び付きの強化」、すなわち、首都東京を海外の優れた人材が活発かつスムーズに往来し、新たなビジネスや文化を創造し続けるような都市環境に進化させることが必須となる。しかし、実は東京は、成長著しいアジア諸国の都市に比べ、海外との往来が少ないのが実情だ。国際競争にさらされる東京は、どう攻勢に転じればいいのか。
例えば、著しい発展を遂げているシンガポールの国際線の就航先数は148都市で、利用客数は5400万人、ソウルの国際線の就航先数は144都市で、利用客数は4500万人に及ぶ。それに対して、東京の国際線の就航先数は成田・羽田を合わせても92都市で、利用客数は3800万人にすぎない。
海外との往来、特に首都東京でのビジネスパーソンや研究・開発の交流、集積を増やすためには、成田の容量拡大を進めつつも、「都心から近く」「24時間オープンしている」という強みを持つ羽田空港の国際線増便が必須となる。
作家で航空ジャーナリストの秋本俊二氏は、羽田の国際化は時代の要請だと語る。
「海外の空港を利用すると、国内線とシームレスにつながっていて、乗り継ぎが非常にスムーズなことに気付かされます。羽田が国際化する前、地方の人は成田に行くまでが大変でした。地方空港に車を預け、韓国の仁川空港を経由して、海外に出掛けた方が早かったほど。首都東京や地方のビジネスパーソンや旅行者の利便性を考えると、国際線のメイン空港として引き続き重要な役割を担う成田と共に、交通手段が多くアクセスの良い羽田も“日本の玄関”としてもっと活用すべきだと考えます」