ビジネスがしやすい環境になれば、首都圏の国際競争力も強化される。より多くの外国人観光客の訪問の他、地方への乗り継ぎがしやすくなることで地方も活性化する。もちろん2020年の東京オリンピック・パラリンピックの円滑な開催にも貢献するだろう。

フル稼働状態の羽田空港
さらに発着回数を
増やすための選択肢は

 航空機の離着陸は、安定して飛行するために向かい風で行うのが望ましい。羽田空港も、空港周辺で代表的な二つの風(海風=南風と陸風=北風)に沿って、二つのパターンで運用されている。いずれも、できるだけ東京湾上空を飛行するよう滑走路の使い方や飛行経路の設定を行ってきた。羽田空港の周辺や東京湾の上空は、航空機で非常に混雑しており、既にフル稼働状態といわれている。国際線を増便するためには、どのような選択肢があるのか。

 まず今のまま、航空機の離発着の間隔を詰めることは、安全確保の観点から限界がある。また、羽田は4本の滑走路が“井桁状”になっているため、着陸する航空機があるときには、別の滑走路から離陸する航空機が待機状態になってしまう。仮に新しい滑走路を造ったとしても、今の滑走路の使い方や飛行経路のままでは、発着回数を増やすことはできない。

 しかし、待機時間を減らすように滑走路の使い方と飛行経路を見直すことで、初めて国際線の発着数を増やすことができるのだ。さまざまな選択肢を検討した結果、東京湾上空以外の空に飛行経路を設定する以外に選択肢が見当たらないことが分かった。今、羽田の発着回数は1時間当たり80回が上限だが、仮に見直しを行えば、この回数が90回まで増えるとされている。

飛行経路の見直しで便数が増える
東京湾上空は大変混雑しており、仮に新しい滑走路を造ったとしても発着回数はほとんど増やすことはできない。滑走路の使い方を見直し、これに合った飛行経路を設定することで、発着回数を増やすことができる
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 また、国際線の需要は相手国との時差の関係で、一定の時間帯に偏っているため、この時間帯別の需要にいかに対応するかが鍵となる。例えば南風時の新たな到着経路は、乗り継ぎや出発地の時間帯などの関係で、国際線の到着便の集中する午後3時~7時の時間帯に限って用いることを想定しており、それ以外の時間帯は従来の経路を使うこととしている。