不動産業界にIT化の大きな波が押し寄せている。

 国土交通省は今年8月末から不動産取引のIT化に向けた社会実験を開始した。不動産会社が顧客との契約時に義務付けられている重要事項説明について、テレビ会議などのインターネット経由で行う。

 ここに来て政府が不動産業界のIT化を推し進める目的の一つは、中古不動産流通市場の活性化である。

 欧米の主要国に比べると、日本の中古住宅市場は非常に小さい。国内の全住宅流通量に占める中古住宅の割合は約13.5%にすぎず、英米に比べれば6分の1程度と圧倒的に少ない(下グラフ参照)。

 また、中古住宅市場が未熟なため、ライフステージの変化などによる住み替えの回数で見ても、日本は英米のわずか3分の1にすぎない。

 一方、全国の空き家数は約820万戸(2013年10月現在)と、全住宅の約13.5%を占めており、さらに野村総合研究所では、35年に空き家率は32%まで上昇すると予測している。

 こうした中、政府は中古住宅市場の活性化により20年までに中古住宅の流通・リフォーム市場を現在の2倍の20兆円に拡大する目標を掲げている。