「閉鎖的」な住まいから
「半開放的」な住まいへ
居間中心型という変化に次いで、もっと大きな変化が迫ってきている。
「日本の住宅は寿命が長くなりました。ある時期のライフスタイルに合うだけでなく、ずっと使い続けられることが重要。居間中心型は子育て期間にぴったりの住まいなのですが、子育て期間は短く、老後の方が長い人生になってきています。それに合わせた住まい方を考えていかねばなりません」
具体的には、第三者が家に入ってくることを想定すべきだという。例えば要介護となった高齢者のためにヘルパーが日々訪れる。そのとき、双方が気兼ねなく、使いやすい間取りを考えておく、ということだ。
「お年寄りだけではありませんよ。赤ちゃんが生まれた家庭に、保育サポートのサービスを提供する自治体も増えています。私の研究室で、保育サポートとして第三者が家に入ってくるときに支障がない間取りを調べたら、『開放的な空間』という条件が浮かび上がりました」
見知らぬ保育サポートの人が室内に入ってくる。そのとき「鍵一本で閉じられる空間」だと、“密室の不安”が生じる。
そうではなく、外部に面して窓がある造りにしておき、そこにレースのカーテンを掛けておく。人の気配が感じられる空間であれば、心理的に楽で第三者の受け入れもスムーズになる。
高齢者の一人暮らしの場合も、緩やかに外部とつながる住まいであれば、近所の人が安否確認できるため、安心だ。
今後増えていく
高齢者のシェア居住
これからの住まいは閉鎖的な形状から半開放的なものへと変化し、そこはかとなく気配が感じられるくらいの開放感に落ち着くだろうと考えられている。
保安上の問題もあるので、人が出入りする1階LDKはオープンにするが、個室はそれぞれ鍵が掛かることも必要となる。
「今後は、単身になった高齢者が知人友人や兄弟に声を掛け、『一緒に住みましょう』と言うグループリビングが増えると思います。そのときに日本のnLDK式の住宅は、意外に応用が利き便利です。nLDKという形は否定されるものではなく、使い方が変わっていくのです」
すでに高齢者のシェア居住は日本に16万世帯もあり、今後も増加していく見込みだ。
nLDKは従来のような「個室主義」の時代を脱し、フレキシブルな「集住」を可能にする器として、変化していく可能性が大きいのだ。
住宅取得を考える人は、そうした“使い回し”も視野に入れ、選ぶべきかもしれない。
「個室があり、みんなが集まる場所がある。そこが大事なのです。多様な住まい方ができ、外部とつながることが、これからの住宅の鍵になると思います」