液状化など課題は多いが
津波の誘導も可能に

 濱田名誉教授の調査によると、東京湾岸に多い臨海石油精製施設も津波の被害を受ける可能性が高い。円筒状の石油タンクは約5000基もあり、それらはテーブルに湯飲みを置くようにじか置きされている。内部の油が少ないと浮いて漂流する危険があり、油が流出すれば、東日本大震災時の気仙沼のような海上火災の危険が高まる。

 津波と同時に広範囲の液状化現象も怖い。東京湾岸の埋め立て地の多くは、液状化現象が知られる前に埋め立てられている。時間が経過して地盤が強靱になったという見方もあるが「地震が起こってみないと答えが出せません。こうした地域にもしっかりとした基礎工事を行った避難施設が必要です」

 ただ、光明もある。東日本大震災後は津波予測の研究が進み、伝播・遡上の高精細な3次元シミュレーションが可能になったと濱田名誉教授は言う。

「津波が陸上のどの地点を、どのくらいの速度・高さで遡上していくのか、また建物に作用する波の力まで計算できるようになりました。それを基に、安全なエリアに避難場所を設置したり、防波堤・防潮堤などで津波を誘導して人家から遠ざけることも不可能ではありません」

 一方、民間としてできることは、住民が普段使う施設を避難場所として活用することだろう。通い慣れている場所であれば、夜間であっても逃げやすい。頑強な造りでスロープがある立体駐車場などは最適な逃げ場といえそうだ。

工期が短く、コストを抑えられる
「認定駐車場」

 認定自走式立体駐車場は正式名称を「国土交通大臣認定自走式自動車車庫」といい、建築基準法により建築物と定義され、基準が定められている。一般認定と個別認定があり、一般認定の駐車場は定められたプランに沿って設計・製造された駐車場のため、(1)耐火被覆が不要、(2)消火設備が簡易、(3)建築確認申請の簡略化という緩和措置が受けられる。そのため、コストを抑えられ工期も短縮できる。個別認定は、プランごとに認定を取得するもので、6層7段以上といった一般認定では対応できない駐車場が造れる。この他に認定を取得しない在来駐車場もある。