「宅急便というto C(個人宛て)の配送に圧倒的な強みを持った物流会社」―-。世の中のヤマトホールディングスという企業へのイメージは概ねこのようなものだろう。ネット通販が隆盛を極めている現在、同社の宅急便ネットワークは生活インフラの一部となっている。しかし、物流の世界は「to C」だけがすべてではない。むしろ、企業間物流など「B」の領域こそが物流の本丸ともいえる。そして、その「B」の分野でもヤマトグループは大きな成果を生み出しつつある。(取材・文/『カーゴニュース』編集長 西村旦)
羽田クロノゲートの「止めない物流」で何が生まれるか?
2013年7月、ヤマトグループは「バリュー・ネットワーキング」構想を発表した。1929年に日本初の路線トラック事業を開始し、1976年に宅急便のサービスを開始するなど、これまで先駆的な取り組みを行ってきたヤマトグループが「第3のイノベーション」と位置付ける壮大な物流改革構想だ。
その基本理念についてヤマトホールディングスの山内雅喜社長は「物流を単なるコストではなく、『価値(バリュー)を生み出すもの』に変えていくこと。モノが流れるプロセスのなかでさまざまな付加価値をプラスしていくことで、日本のモノづくりをもう一度成長軌道に乗せるお手伝いをしていきたい」と語る。
日本の産業界ではこれまで、「物流」は事業活動に欠かせない機能ではあるものの、それ自体は価値を生まない「コスト」という見方が主流だった。ヤマトグループが掲げる構想はその考えを根底から変え、物流そのものがモノづくりなど事業活動に新たな価値をプラスするものにしていくことを目指している。つまり、ヤマトグループのインフラを活用することで、企業価値をあげていこうという試みだ。
そして、その「バリュー・ネットワーキング」構想を象徴する一大拠点が、同年10月に開設された「羽田クロノゲート(CG)」(東京都大田区)。
総延床面積約20万㎡に及ぶ同拠点は、施設内に集約された様々な価値を付加しながらヤマトグループの国内外のネットワークをスピーディーに、かつ滞りなく結節する「止めない物流」を実現する日本最大級の総合物流ターミナルだ。