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「顧客の創造」がマーケティングの目的である

年間10億件蓄積されていく顧客データを
メニュー開発やマーケティングに活かす

すかいらーく|ビッグデータ・マーケティング

河合起季
2015年12月18日
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仮説検証を大幅に短縮し
PDCAを高速で回す

 インサイト戦略グループではまず、分析のインフラやツールを刷新した。POS(販売時点管理)データなどの分析基盤を「AWS(Amazon Web Services)」に構築した。

 「それによって最も大きく変わったのは分析のスピードです。従来は1つの仮説検証を行うのに、長ければデータの抽出だけで3?4時間かかりました。それが現在は数分でできるようになり、マーケティングのPDCAサイクルが飛躍的に縮まったのです」

 モバイルアプリなどデジタル媒体のPDCAも、分析時間がボトルネックで、従来2?3週間かかっていたが、現在は数時間で完了し、トータルのPDCAサイクルは半分以下の1週間に。検証を数多く繰り返すことができるようになった。

 「たとえば、デジタル販促でクーポンAとBを検証することによって、利益が1000万円も2000万円も変わってきます。仮に1000万円とすると年間50回、検証を積み重ねれば、5億円の利益を生み出せることになります」

クーポンのヒット率が
3倍に増加

 クーポンの内容が同じ100円引きでも、対象が1000円のステーキなのか、300円のサラダなのかによって、粗利も集客も大きく変わってくるからだ。このようにマーケティングの最適化によって収益力の強化を図ってきた。

 さらに、ビッグデータ解析ツールであるSAPの「SAP Predictive Analytics」やIBMの「SPSS Modeler」も強力な武器となった。これらにより、従来のデータ集計中心の分析から、大量の変数を用いた来店予測や、顧客グルーピング分析など高度な統計解析が可能となった。

 その結果、同じランチの客でも「平日、ランチのために来店したサラリーマン」「平日、ランチとおしゃべりを楽しみに来店した主婦グループ」といったように、より細分化した顧客に向けた、きめ細かいマーケティングが可能になった。

 顧客をより知ることで、ほしい人にほしいクーポンと情報を適切なタイミングで届け、来店の確率を高めていく「One to Oneマーケティング」にも力を入れている。

 たとえば、平日・ランチ+おしゃべり需要向けに「ミスジステーキとアボカドのサラダごはん」「ボルチーニリゾットのよくばりプレート」といった、ちょっとオシャレなメニューを開発し、タイミングよくモバイルアプリで情報を発信する。

 実際、あるクーポンを送った結果、マスアプローチとターゲットアプローチでは後者のほうが3倍近くヒット率が高くなったという。

すかいらーくでは、グループ全体で年間10億件にも及ぶレシートのデータを分析し、購入商品の組み合わせの傾向などを多角的に検証し、メニュー開発やクーポンの内容などに活かしている。クラウド基盤でビッグデータの分析を高速に行う技術により、複雑な仮説の検証も短時間で終了し、テストの回数が大幅に増加。収益に直結する施策を打つことが可能になった
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顧客の創造とは、自社の顧客基盤を拡大することである。そのためにはマーケティングとイノベーションが不可欠である。顧客第一主義や顧客のセグメンテーションへの盲信から抜け出し、イノベーションを軸に顧客との新たな関係性の構築をすすめる企業と、マーケターの考え方を探る。

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