仮説検証を大幅に短縮し
PDCAを高速で回す
インサイト戦略グループではまず、分析のインフラやツールを刷新した。POS(販売時点管理)データなどの分析基盤を「AWS(Amazon Web Services)」に構築した。
「それによって最も大きく変わったのは分析のスピードです。従来は1つの仮説検証を行うのに、長ければデータの抽出だけで3?4時間かかりました。それが現在は数分でできるようになり、マーケティングのPDCAサイクルが飛躍的に縮まったのです」
モバイルアプリなどデジタル媒体のPDCAも、分析時間がボトルネックで、従来2?3週間かかっていたが、現在は数時間で完了し、トータルのPDCAサイクルは半分以下の1週間に。検証を数多く繰り返すことができるようになった。
「たとえば、デジタル販促でクーポンAとBを検証することによって、利益が1000万円も2000万円も変わってきます。仮に1000万円とすると年間50回、検証を積み重ねれば、5億円の利益を生み出せることになります」
クーポンのヒット率が
3倍に増加
クーポンの内容が同じ100円引きでも、対象が1000円のステーキなのか、300円のサラダなのかによって、粗利も集客も大きく変わってくるからだ。このようにマーケティングの最適化によって収益力の強化を図ってきた。
さらに、ビッグデータ解析ツールであるSAPの「SAP Predictive Analytics」やIBMの「SPSS Modeler」も強力な武器となった。これらにより、従来のデータ集計中心の分析から、大量の変数を用いた来店予測や、顧客グルーピング分析など高度な統計解析が可能となった。
その結果、同じランチの客でも「平日、ランチのために来店したサラリーマン」「平日、ランチとおしゃべりを楽しみに来店した主婦グループ」といったように、より細分化した顧客に向けた、きめ細かいマーケティングが可能になった。
顧客をより知ることで、ほしい人にほしいクーポンと情報を適切なタイミングで届け、来店の確率を高めていく「One to Oneマーケティング」にも力を入れている。
たとえば、平日・ランチ+おしゃべり需要向けに「ミスジステーキとアボカドのサラダごはん」「ボルチーニリゾットのよくばりプレート」といった、ちょっとオシャレなメニューを開発し、タイミングよくモバイルアプリで情報を発信する。
実際、あるクーポンを送った結果、マスアプローチとターゲットアプローチでは後者のほうが3倍近くヒット率が高くなったという。