課題解決のアクションを
生み出す事業モデルが誕生

 とはいえ、単にデータを公開しても市民や企業に活用してもらわなければ意味がない。そこで横浜市では、民間からの提案を受け付ける「オープンデータデスク」を設けた。

 ここに寄せられた提案の中から最初に形になったのが「LOCAL GOOD YOKOHAMA」(以下ローカルグッド)。横浜市のデータを活用して地域の課題をわかりやすく伝え、市民参加型で課題解決のアクションを生み出すウェブプラットフォームだ。この事業モデルが全国の自治体から注目されている。

 運営はNPO法人の横浜コミュティデザイン・ラボが行い、ITシステムはアクセンチュアがプロボノ(社員の時間とスキルを無償で提供する取り組み)で構築した。2014年6月から試行的運転を始め、同年10月から本格稼働している。

 このサイトには、身の回りの地域課題を投稿する機能、地図情報を使った横浜市18区別(または全域)の課題やその課題への取り組みを紹介する機能、オープンデータをインフォグラフィックスやデータビジュアライズなどで表示する機能などがある。さらに、地域の課題解決に取り組むプロジェクトに対して「クラウドファンディング」による資金調達機能も備えている。

「これまでに7件のプロジェクトがクラウドファンディングを行い、すべての案件で最低必要金額をクリアしました。調達額は合わせて約500万円です」

 資金調達に成功した案件の一つ、「横浜から全国へ!ダブルケア(育児と介護の同時進行)サポート横浜プロジェクト」は約76万円を調達した。活動の主な目的として「ダブルケアラーに寄り添うサポーターの研修プログラムを開発、サポーターを地域に増やし、地域支え合いのネットワークをつくる」ことを掲げる。

「ローカルグッドに関して、横浜市は直接的な資金の支援はしていません。私たちが行っているのは、データの提供と、市役所の強みを活かしたコーディネートです。行政の仕事は山積する課題を一つひとつ解決していくことですが、予算確保だけでも相当な時間がかかってしまいます。地域の課題をいち早くすくい上げ、解決に向かって踏み出せるのも、オープンイノベーションの大きな利点です」

「ローカルグッドヨコハマ」の「Earth View」では、地域支援のプロジェクトを実施するNPOや個人の居場所が地図上にマッピングされており、クリックすると活動内容などが確認できる