「これ以上は無理だ…」リベラル色の強い
北欧諸国から聞こえてくる悲鳴と本音

 ドイツと同様に、北欧諸国も大挙して押し寄せる難民への対応に頭を抱えている。充実した社会福祉制度で世界的に知られるスウェーデンでは近年、反移民を政策に掲げる右翼政党「スウェーデン民主党」の支持率が上昇。加えて、昨年夏には難民の受け入れに積極的だったスウェーデン政府も、難民政策にかかるコストが重荷となって、難民申請者の受け入れに対する規制を大幅に規制し始めた。この1年で約15万人の難民がスウェーデンに入国しており、今年は難民対策に600億クローナ(約8000億円)支出が見込まれている。人口1000万足らずの国にとっては、非常に大きな支出だ。

 こういった背景もあり、スウェーデンにおける難民申請者への思いは複雑だ。ストックホルム近郊に住む音楽家のデヴィッド・ベングレン氏が、スウェーデンの抱えるジレンマについて語る。

 「(反移民政策を掲げる)スウェーデン民主党がなぜここまで支持されるようになったのか、理解に苦しむ。ただ、スウェーデン民主党のメンバーが移民や難民に対して排斥的なパフォーマンスをするたびに、政党の支持率は上昇するという傾向が続き、有権者の抱える不満をうまく利用しているようにも思える。スウェーデン民主党の支持率は最近までずっと上昇を続けていたが、最近行われた世論調査では支持率が減少しており、人気の頭打ちも指摘されている。私個人はこの支持率低下がもっと続いてほしいと願っている」

 一方、デンマークでは1月に難民申請者の財産を没収する法案が成立し、波紋を呼んでいる。この新法では、デンマーク政府は難民申請者が保有できる財産や現金を日本円で約15万円に設定。限度額を超える財産は政府が没収し(結婚指輪などは対象外)、それを難民申請者の生活費に充てるというものだが、実際にはデンマーク入国に対する抑止力となっている部分もあり、国連などから批判を受けている。デンマーク国内では難民の受け入れは大きな話題となっており、1月に成立した財産没収法に反対する声も多いが、スウェーデンよりも少ない人口(約550万)で、高齢化という問題も存在するなか、難民よりも自国民のケアを優先させてほしいという声は少なくない。

 コペンハーゲン在住のカレン・イベルセンさんは、難民がデンマーク社会に溶け込み、仕事に就くことが最も重要な難民対策だと語る。

 「難民問題における雇用と福祉の話は、現在デンマークで最も議論されている話題です。難民を何年にもわたって国が保護し続けた場合、そのコストは莫大なものになると容易に推測できます。デンマークも日本同様、国民の高齢化に起因した福祉コストの上昇という問題に直面しています。難民の多くはデンマークという新天地で、働きながら普通の生活を送りたいのではないでしょうか。

 そのために、難民への就業支援を行い、彼らに仕事についてもらい、そこからデンマーク社会に適応してもらうのが解決策だと思います。しかし、デンマーク人の多くが自分たちの仕事が、とりわけ非熟練労働の分野で、難民に奪われてしまうのではと懸念しています。その空気を感じ取ったナショナリズム政党は、難民をキャンプに入れて社会から隔離すべきだという見解を示していますが、それが果たして問題解決の糸口になるのでしょうか」

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各国の思惑が欧州分断に拍車をかける?

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