コペンハーゲンから車で2時間の場所にあるスヴェンボーで地元の企業に勤務するマーティン・フィッシャーさんは、大挙してデンマークにやって来る難民に対する不満を表立って口にできない市民のフラストレーションが、保守政党の台頭を助長していると語る。
「デンマークは長きにわたって、人道的で弱者にやさしい社会を目指してきた。移民や難民がデンマークにやって来ることを望まないと公の場で口にしたら、極右政党の支持者ではないかと非難されるだろう。しかし、(新法を作った)保守政党が一定の支持を得ているのも事実だ」
「移民や難民に優しい政策」を取り続けてきた北欧諸国だが、ここにきて大きなジレンマに直面しているのは間違いない。
解決策の見いだせない難民問題
各国の思惑が欧州分断に拍車をかける?
難民申請者の受け入れをめぐって、欧州各国で歩調が揃わない状態が続いている。さらに多くの難民がヨーロッパを目指すと考えられるなか、欧州各国ができることは何か? 前出のドルトムント工科大のローネンドンカーさんは、受け入れ態勢が十分でない国も、受け入れ以外の分野で協力できることはあるはずと強調する。
「難民の受け入れをめぐっては、ドイツ国内で世論が完全に二分しています。保守層からは、ドイツの国境を封鎖し、入国する難民の数を早急に制限し、デンマークのように難民にも経済的な面での自己負担を求める声が出ています。一方で、ヨーロッパで各国が責任をもって一定数の難民を受け入れるべきだという声もあります。難民の受け入れ態勢が整っていない国は、資金援助という形でコミットすべきという意見で、ヨーロッパ各国が内向きになるのではなく、ヨーロッパ全体で問題の解決に努めるべきというものです。受け入れをめぐって世論は二分していますが、共通しているのはドイツだけで全ての難民の対応は不可能だという認識です」
ケルン在住のジャーナリストで、難民問題をウォッチするニコラス・フィッシャー氏も、ヨーロッパ全体で協力しない限り、特定の国だけが疲弊してしまうと警鐘を鳴らす。
「私の周辺にはいないものの、失業や年金受給額の縮小を難民問題のせいにするドイツ人は存在する。いくつもの社会的な問題の原因を簡単に説明することができるため、難民は格好のスケープゴートになりやすいのだ。この傾向はドイツ以外のヨーロッパ諸国でも見られるが、EUや国連が難民問題に対してどれだけ本腰を入れて対応するのかが大きなポイントだろう。各国がこぞって国境周辺にフェンスや壁を建設し始めれば、それは終わりの始まりを意味する」
難民申請者の受け入れをめぐって一枚岩になれないヨーロッパの現状。加えて、フラストレーションを抱えた市民の思いが、揺り戻しの形で各国の難民政策に影響を与え始めている。解決の糸口は果たして見つかるのだろうか? ヨーロッパの冬は間もなく終わりを迎え、多くの難民が、再びヨーロッパを目指す。



